れあこん

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

ここはパリだもの。わかるでしょ? - ミケランジェロ・プロジェクト レビュー

はじめに

TOHO CINEMASが2015/11/07〜13まで会員限定サービスをやっていました!通常1400円の入場料ですが、この期間中はいつ見ても1100円!普段私はレイトショーorナイトショーで1300円で見ていますが、それよりも安い!ということで2本ほど見て来ました。

まずは1本目、ミケランジェロ・プロジェクト。ナチスが相手で戦う辺りは過去に記事にした『イミテーション・ゲーム』や『チャイルド44』を彷彿とさせますが、本作では一風変わって芸術作品を守る戦いを繰り広げます。果たして……

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概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

ヨーロッパ各国に侵攻したナチスドイツが歴史的に重要な美術品の略奪を繰り返していた第2次世界大戦下、ルーズベルト大統領から建造物や美術品を保護する任務を託された美術館館長フランク・ストークスは、7人の美術専門家で構成される特殊チーム「モニュメンツ・メン」を結成し、危険な状況下で美術品保護のための作戦を遂行していく。

感想/印象に残ったフレーズ

観終わった後の率直な感想は、「登場する仲間達が多くて誰が誰だか分からん」でした。顔が似ている人が多かったりストーリーが早かったりといった理由もあるかとは思いますが、どんな個性を持ったキャラクターなのか、全員を把握することが困難でした。

本作は冒頭でも記載しましたが、芸術作品を守る部隊のお話。ジョージ・クルーニー演ずるストークスが渋格好良く、その格好良さに助けられた作品だと思います。

※余談ですが、ジョージ・クルーニーは以前レビューした『トゥモローランド』や『ゼロ・グラビティ』でも主演されていました。ここ数年ノリにノっていますね。

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さて、印象的だったシーンは以下の2つ。
1.ここはパリだもの。わかるでしょ?
2.人の命と、芸術作品の価値・重さ

1.ここはパリだもの。わかるでしょ?

フランスはパリで、本作の紅一点で恐らくヒロインポジションであるシモーヌシモーヌが芸術作品が何処に行ったのか?その情報をジェームズに渡す代わりに、夜のお誘いをするシーン。ここでまさかのジェームズが断るという流れ。シモーヌ自身確かに野暮ったく描かれているのですが、普通の映画作品でしたら一旦メイクラブした上でストーリーに戻るはず。ここでジェームズが何もせずに芸術品の捜索に戻るという男気溢れる行動をやってのけます。

監督はモニュメンツ・メンの任務の厳しさを表したかったのでしょうか?それとも、芸術かぶれの野暮ったい女性はそういった対象にすらならないということを表現したかったのでしょうか。思わず笑ってしまいましたが……もし笑わせることが狙いだとしたら、脚本としては大成功ですね。

2.人の命と、芸術作品の価値・重さ

ラストシーン。大統領でしょうか?偉い人に問われたジェームズ。 ミケランジェロの聖母子像の奪還に人の命が沢山犠牲になった。その価値はあったのか?と。芸術作品と人の命を天秤に掛けたときに、人道的な立場から人の命を優先するべきでは無いのか?という問いです。

本作では、その問いに対し、きっぱりと「No」と言っています。この部分の潔さ、大変興味深かったです。デリケートな内容故にぼかしごまかしエンディングを迎える・あるいは人の命の方が大事だよね、という作品が多い中、本作ではそれを明確に否定しています。芸術作品とは過去の偉人が作ったものであり、沢山の人が生まれ、死に、それでもずっと命が続いていくのは、そういった優れたものを脈々と受け継いでいくため。本作は「人はミームの乗り物でしかない」ということを地で行った作品なのだなと感じました。

おわりに

本作の採点ですが、66点です。
物語としてはもっと楽しい魅力あるものに出来るはずです。キャストなんかとても魅力的に見えたのですが、いかんせん物語の流れや演出がよろしく無かったですね。監督が伝えたい思いを伝えることは出来ているかと思いますが、それを映像作品・娯楽作品としての完成品に仕上げる部分がお粗末で、とても勿体無かったです。

以下、余談ですが。
外国で上映された際のタイトルはThe Monuments Menだったのですが、国内ではミケランジェロ・プロジェクトになっています。過去に様々な作品が国内で上映される際に付けられた邦題で文句を言われているかと思いますが、本作についてはとてもぴったり・洒落たタイトルを付けたなぁと感心しきりでした。

MONUMENTS MEN

MONUMENTS MEN

2015/11/07 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

君はきっと、素晴らしい大人になる - リトルプリンス 星の王子さまと私 レビュー

はじめに

皆さまご存知、世界各国の子供たちに愛読されている児童文学の最高峰である『星の王子様』。本書が世に出て以来、初めて映画作品となったのが本作とのことです。

どこのアニメーションスタジオが作っているのでしょうか、ピクサーよろしくとても可愛いらしい3Dモデリング。単に人の顔だけでなく、星の王子様の原作の画に近い形での再現もしており、とても高い技術力・原作への愛が感じられます。

私自身、2ヶ月ほど前に箱根の『星の王子さまミュージアム』に行ったのですが、
その際に現地に本作品の宣伝ポスターやポップが展示されていたこともありまして。
この2ヶ月間、本作をとても楽しみにしていました。 f:id:tsuyoring:20151004110555j:plain ※展示ポップを撮り忘れたので、写真はイメージ(星の王子さま像)です。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

新しく引っ越した家の隣に住む老人が気になる9歳の女の子。若い頃は飛行機乗りだったという老人は、昼間は飛行機を修理し、夜は望遠鏡で空を眺めて暮らしていた。2人は仲良くなり、女の子は老人から、砂漠で出会った星の王子さまの話を聞かせてもらう。しかし、やがて老人は病に倒れてしまい、女の子は老人が会いたがっている星の王子さまを探すため、オンボロ飛行機に乗って空に旅立つ。

感想/印象に残ったフレーズ

観終わった後しばらく、涙が頬をつたっていて立つことが出来ませんでした。
あの名作を良くこうも美しくアレンジ仕切ったな、というのが率直な感想です。

本作では、一番最初に登場人物の女の子が"大人の世界"で"大切な人"になるために母親の教育の元生活をしています。ですが、引っ越した先で飛行機乗りの老人:サン=テグジュペリと出会って変わっていきます。そして、本当に大切な———目に見えない———ものに気付いていく。これが物語の前半です。

物語の後半は、星の王子様を探すために女の子が旅立ちます。
大人の星で出会った星の王子さま=プリンスは、蛇に噛まれて恐らく転生した後、故郷の星の愛する人=薔薇の記憶を忘れ、大人になる教育を受けて、社会の歯車として大切なことを忘れて生きていました。ですが、何をやっても駄目なプリンス。それもそのはず、彼は元は星の王子さまなのですから。

女の子が見つけててんやわんやするうちにプリンスは記憶を取り戻し、昔の自由なままの心で大人の星を脱出し、オンボロ飛行機に乗って故郷に向かうのです。

さて、印象的だったシーン・フレーズは、以下の4つですね。
 1.「大人って本当に、とっても馬鹿」「子供って本当に奇妙だ」
 2.ビジネスマン、星を所有する
 3.「君はきっと、素晴らしい大人になる」
 4.エンドクレジットの仕掛け
順番に見て行きましょう。

「大人って本当に、とっても馬鹿」

学校に入って勉強をして大人になっていくことを受け入れていた女の子。彼女が老人と出会って、星の王子さまの物語を読んでから変わっていきました。生産性を維持するため、社会にとって大切な歯車になるための生活から、彼女自身が興味を持っている、本当に大切なことの為に生きる生活へ。

そんな中で彼女が、あくせくと働いている大人達を見て言った台詞です。ルールの中で日々を同じようにくたくたと過ごしている大人を見ての台詞。この台詞の対象は、何も第三者の大人だけはありません。

本作では母親がボード上に子供の学習状況をマグネットで分かるようにしていて、進捗具合をチェックする描写が多くあります。そんな中で、自分を育てようとしている母親についても同じように、自分の教育をひたすらチェックしているだけの馬鹿な大人として見ているのです。

まだ経験の少ない子供の視点からの純粋すぎる台詞ですね。私たちも小さい頃はこの少女のようなことを考えていたのではないでしょうか。とても胸に刺さるひと言でした。

物語終盤で、子供の心を失っている星の王子さまが、少女を見て「子供って本当に奇妙だ」と語るのですが、これが前半の彼女の台詞とのとても良いコントラストになっていまして。とても印象的でした。

ビジネスマン、星を所有する

原作ではさまざまな"馬鹿な"大人達の一人でしかなかったビジネスマン。
登場人物のひとりでしかなかった彼が、本作ではラスボスが如き大活躍をするのです。
本作のオリジナルである「大人だけの星」ここを牛耳っているのがビジネスマンです。
彼が努力を重ねた結果、宇宙にあるたくさんの星々を所有するようになります。
少女の星が馬鹿な大人達だけの星になってしまっていたのも全て彼のせいでした。

様々な馬鹿な大人達が描かれている中、彼が何故こんなポジションに居るのか。それは現代が資本主義社会だから。つまり、ビジネスマンの様な人間が崇め尊敬される世の中に私たちが生きているこの世界が成りきっているからではないでしょうか。

彼は来る日も来る日も努力していて、その結果たくさんの富を得ました。それは現代の世界においては、そうなるべき正しいこと、のはずです。このシーン、頑張って働いている現代の大人に対しての配慮を"敢えて"している様に感じました。いやらしいまでの強烈なメタファーですね。

「君はきっと、素晴らしい大人になる」

エンディング直前のことです。
ビジネスマンと戦い、星の王子さまを助けた少女が自分の星に帰ってきて。病院にいる老人と会話をしている際、彼から言われた台詞です。
台詞としてはベタもベタ、ベッタベタなのです。ですが。大事なことを忘れないようにという老人の台詞や彼女のここまでの冒険があいまって、とても濃厚な味わい深い言葉に感じられました。

エンドクレジットの仕掛け

松任谷由実さんの『気づかず過ぎた初恋』とともに流れていくスタッフロール。エンディングの曲がとても素敵で、星の王子さまの世界観ととてもマッチしていました。


映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』ミュージックトレイラー【HD】2015年11月21日公開 - YouTube

曲だけでなく、映像も素敵ですね。星の画像の配置が上手にされていて、2Dなのにまるで3次元映像を観ているような錯覚に捕らわれました。

そして何より印象的だったのが、キャストの覧の登場人物が『The Little Girl』『The Aviator』などの名前を持たない表記になっていること。少女や飛行士は、何も本作の登場人物だけじゃないよ、観ているあなたたちがみんなそうなんだよ、と言われているようでした。

さらに、定冠詞のTheが使われているのもポイントですね。
具体的な名前を付けないでおきながら、不特定多数に付ける「a」ではなく、みんながお互いに知っている共通の言葉につける「The」を使っているのです。「なついたらお互い大切になるんだ」というキツネの台詞が思い出されますね。この表記を見つけたとき、胸に熱い思いがこみ上げてきて止まりませんでした。

おわりに

本作の採点は85点です。
『星の王子様』という世界各国にファンが大勢居るであろう作品に対して、王子を記憶を失った状態で登場させるという、批判も巻き起こるであろう設定。それをも含めて上手に料理しきった名作だと思います。

余談ですが、物語の最後にプリンスの顔が絵本の絵のタッチから少女と同じように目も口も動く他の人間達と同じようなタッチに変わります。感情を分かりやすく伝えたい・少女と同じ時代に彼の心自体が本当にやってきた、などの演出上の意図があったのかもしれません……が、個人的には絵本のタッチのままの方が好きでした。

リトルプリンス 星の王子さまと私

リトルプリンス 星の王子さまと私

リトルプリンス 星の王子さまと私 (竹書房文庫)

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2015/11/28 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

マナーが、作るんだ、人間を! - キングスマン(Kingsman) レビュー

はじめに

アントマンを観に映画館に行ったところ、なんか似たような名前の作品を発見。
マーブルでも無さそうだし、ヒーローものでも無さそうだし……
ポスターをよく読んでみるとスパイアクションとありました!
スパイとか入り組んだ話は大好物(アクションもね)なので、観てみることに。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

ブリティッシュスーツを華麗に着こなし、スパイ組織「キングスマン」の一員として活動しているハリー。ある日、組織の一員が何者かに殺されてしまい、その代わりに新人をスカウトすることになる。ハリーは、かつて命を助けてもらった恩人の息子で、密かにその成長を見守っていたエグジーをキングスマンの候補生に抜擢する。一方その頃、頻発する科学者の失踪事件の首謀者ヴァレンタインが、前代未聞の人類抹殺計画を企てていた。

感想/印象に残ったフレーズ

ひと言で言うと、キングスマン達がただひたすら格好良い!映画です。

ヴァレンタインの野望は、携帯のSIMから出る電波で脳を操作し、理性を失った人々同士で殺し合いを行わせて人類の数を減らすこと。そこに立ち向かうエグジーとハリーの紳士っぷりに心がキュンキュンしてしまいました。

さて、特に印象的だったのは以下の3シーンですね。
 1.紳士が理性を失うと……
 2.『聖者の行進』の音楽とともに
 3.スリー、ツー、ワン、パーティー開始!

それではひとつひとつ見ていきましょう。

1.紳士が理性を失うと……

キングスマン・ハリーが電波で脳を操作され、理性を失ってしまうシーンですね。
それまで沈着冷静な紳士でいたハリーが我を忘れて殺し合いに参加してしまい、
結果的にその場(教会)に居た人全員を殺戮してしまうのです。
ハリーのそれまでの行動とのギャップに笑いを抑えきれませんでした。

2.『聖者の行進』の音楽とともに

人の脳を操る電波とともに本作でキーとなるのが、それを受け付けないようにするチップ。ヴァレンタインが選らんだ人はこのチップを埋め込むことで理性を失わない、つまり殺し合いに参加しないで済むような仕組みになっています。

ですが、このチップには秘密があって。ヴァレンタインが意のままに爆発させることが出来るのです。 そこを逆手に取ったエグジーが、ハッキングをおこなってシェルターに隠れていた人全員の頭を爆発させてしまったのが本シーン。

エグジーがハッキングに成功し、爆発させた瞬間に流れる『聖者の行進』。 そしてスローモーションで人々の頭を爆発させ、キノコ雲があがる演出。 余りのシュールっぷりに思わず爆笑してしまいました。 B級映画のようなチープさなのですが、それを感じさせない見事な 作品の雰囲気作りというか……素晴らしいのひと言です。

スリー、ツー、ワン、パーティー開始!

ヴァレンタインの野望は成就し、何度か人類は殺し合うことになります。
以下の予告PVでも観る事ができるシーンですね。


映画『キングスマン』予告編 - YouTube

ハッピーエンドになるとばかり思っていたところでまさかの殺し合い・大混乱が発生してしまい、しかもそれが面白おかしいBGMとともに流れてきて。物語的には最悪の展開のはずなのに、ここも何かコミカルで、面白くてしょうがなかったですね。

おわりに

というわけで、本作品の採点は82点です。
面白おかしいギャグ満載の作品にも関わらず……いや、だからこそなのでしょうか、キングスマン達のスタイリッシュでクールで超強い姿が見事なコントラストとなり、格好良くて堪りませんでした。アクション映画として観ても文句なく素晴らしい、名作だったと思います。

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2015/09/24 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

名誉は持って生まれるもの、誰もそれを奪えず、失ってもならぬ。 - ラスト・ナイツ レビュー

はじめに

普段私はサラリーマンをしているのですが、その勤め先の社食にて本作の試写会が開かれました。「忠臣蔵」がベースのハリウッド作品ということで不思議に思いましたが、「キャシャーンがやらねば誰がやる」で有名な『CASSHERN』で有名な紀里谷和明監督のハリウッド進出作品とのことでした。
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クールに(しかし心は熱く)語る紀里谷監督。

短い時間ではありましたが、様々な事を語られていました。 本作品、世界33カ国で上映が決まったにも関わらず、日本では配給会社がどこも契約してくれなかったこと。そのため、しょうがなく自分達で全て配給をおこなっていること。そして、これからの世の中、日本だけではなく世界で勝負することの意味……最初の挨拶の間しか居られませんでしたが、とても惹かれる語りでした。

さて脱線しましたが、本作のレビューにいきましょう。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

大臣への賄賂を断り、反逆罪を勧告されたバルトーク卿に死罪が下された。最も残忍な処刑方法によるその死罪は、愛弟子ライデンの手による斬首だった。バルトーク卿の首を自身の刀で落とすこととなったライデンと仲間の騎士たちは、無念の思いで復讐の時を待ち続けた。そして1年後、ライデン率いる気高い騎士たちは、主君バルトーク卿の不当な死に報復する戦いをはじめる。

感想/印象に残ったフレーズ

主君への忠誠こそが騎士(ナイツ)の生きざま。 そのメッセージを最初から最後まで貫き通した作品でした。

概要だけ読むとミスリードになりそうなので、補足します。
主人公であるライデンはバルトーク卿を斬首してから、魂が抜けたように腐ってしまいます。それこそ報復するために戦い始めるまでが本当に長い。この間、報復を考えるような描写も無く、ただただクズな酒飲み男をしています。酒に溺れ女に溺れ、最後には主君であるバルトーク卿より授かった剣すら売ってしまう。

この展開から「やはり俺は改心した!宿敵(大臣)に復讐する!」
となるのであれば嫌だな、と正直ゲンナリして観ていました。

ですが、実際にはそのおこない全てが演技で、1年間クズを演じ続けていたのです。斬首から1年後、見張り者が見張るのを止めたその瞬間、復讐計画が動き出します。ずっとクズを演じていたライデンが一気に騎士の顔になり、仲間を率いて攻め込むのです。このシーンは手前味噌ながら鳥肌が立ちましたね。

さて、本作で個人的に印象に残っている2つのフレーズです。
 1.血のつながりより大切なのは心の絆だ
 2.名誉は持って生まれるもの、誰もそれを奪えず、失ってもならぬ

特に2つ目の台詞は重く心に響きました。
ライデンが上述した演技をし通した後に、復活して放った台詞。
そのシーンを経たからこそ、説得力があり、心に染みますね。

おわりに

本作は一見すると騎士の生き様を描く作品の様に見えますが、その実は古くは戦国時代から、日本の侍に脈々と伝わってきた大和魂なのではないでしょうか。特に一番最後のシーンは正にハラキリですね。

また本作、最後のシーンでライデンは死んでしまいますが、その騎士としての生き方は次世代へと受け継がれます。そういう意味でのLast(続く)Knights(騎士)というタイトルだったのかと思います。

採点ですが、70点です。
映像も見事のひと言ですが、いかんせんストーリーがとてもベタベタな内容でした。 ライデンの心が折れていないことが分かるような、伏線もなかったのはマイナスですね。ただ、ベタベタではありますが、シンプルで、その分とても力強さは感じます。 監督がこういった魂を全世界に届けたい、という気持ちはとても伝わる作品でした。

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2015/11/02 鑑賞@社食

亜原子の世界から戻ってくる方法があるというのか?! - アントマン レビュー

はじめに

マーブルの最新作!
アイアンマンやらアベンジャーズやら派手な作品が多いマーブルですが、
今回は一風変わったアリサイズに変身できるスーツを着た男が主人公。ど派手さがウリのスタジオですが、さてはて本作ではその特色はどう反映されるのでしょうか。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

仕事もクビになり、養育費が払えないため最愛の娘にも会えないスコット・ラング。
そんな崖っぷちのスコットに、謎の男ハンク・ピムから意外な仕事のオファーが届く。
それは、体長わずか1.5センチになることができる特殊スーツを着用し、
アントマン」になるというものだった。選択の余地がないスコットは渋々ながらもアントマンとなり、人生をやり直すための戦いに乗り出す。

感想/印象に残ったフレーズ

マーブルの中ではかなり異色でしたが、中々に楽しむことができました。 本作でとても印象に残ったのは以下のシーンですね。

出だしでいきなり「トニー・スターク」の名前が出てきており、 アイアンマンと世界観が繋がっているのだなとニヤッとしてしまいました。 マーブルファンには堪りませんね。 ですが、本作の主人公や、アントマンスーツの発明者は アベンジャーズに対して非好意的な立場の人達として描かれておりまして。 それぞれのヒーローの派手さ・地味さというコントラストも相俟って興味深かったです。

さて、そんな本作ですが、私の印象に残ったのは以下の4つです。
 1.ダレンが打つサイズを縮小するビーム
 2.ムショ仲間のルイスのトーク
 3.アントマンとイエロージャケットの戦闘
 4.亜原子サイズにスコットが縮み続けるシーン

1つ目。
アントマンスーツを製造したピムの弟子、ダレン。 彼がビジネス相手に対してビームを打つと、相手は小さな肉塊になってしまう。 こぷこぷ蠢いている、人ならざる形となってしまった”ソレ”を 紙で一拭きしてトイレに流してしまうシーンです。 ここでは一見ダレン(敵)の凶暴さ、狂気を描いていますが。 それ以上に本作の背景のヘビーさ・奥深さ・そして気持ち悪さを感じさせてくれます。 小さな肉塊に至ってはR15でも良いのでは?と思うほどの演出で。 人によっては吐き気を催すのではないでしょうか…… アントマン、一見ライトな作品に見えますが、その第一印象をぶち壊すシーンでした。

2つ目。
ムショ仲間のルイス。彼がまた良い味を出しているんです。 完璧な脇役なのですけれど、気の良いギャグ好きなおっさんと言った感じで。 彼の馬鹿なトークは、小さな子供なんかは特に好きなんじゃ無いでしょうか。

特に、スコットに対して、泥棒をするよう勧誘しているシーンは面白かったですね。 「ああ、エミリーってのは初体験の相手で」「本題に行け」といった スコットとの掛け合いは、重苦しい本作の中での清涼剤になっていました。

3つ目。
本作のクライマックスでイエロージャケットを着たダレンとアントマンが戦います。 ですが、そのシーンの演出が実にコミカルでして。 例えばアイアンマンであればど派手に飛び回ったりビーム打ったりするじゃないですか。 ソーであれば雷で一網打尽にするじゃないですか。

でもアントマンはそんなことは出来ない。超速でパンチを繰り出すのみ。 戦闘スタイルはただただヒットアンドアウェイ。 しかもアリサイズで戦っているから、例えばアントマンが大きな建造物を投げても、 それは現実世界の人間の視点に戻すと、おもちゃの家が飛んだ程度の事実なんですね。 この「箱庭の中の戦争」感がなんとも言えなかったです。 敢えてちゃっちいと分からせるような演出をしているんですかね?

また、逆に物体を巨大化させるようなシーンもありました。 機関車トーマスが巨大化して家を壊すんですね。そして目がきょろきょろ動く。 シリアスなシーンにこんなとんでも描写を混ぜてくるので、 とてもシュール……シュールを通り越して、むしろ気味悪く感じられました。

さて、最後4つ目。
主人公のスコットが上記の戦闘で勝つために禁断の技である 原子サイズへの縮小をおこなうシーンです。 アントマンスーツの制御が効かなくなってしまい、 時間という概念の無い世界で永遠に縮み続けることになったシーン。 もうこの設定だけでも身の毛もよだつのですが。 加えて、このシーンの映像表現がとても美しくて。 特に最後に紅〜紫色のダイヤのような世界でぷつっと消えてしまう演出。 人智を越えた世界、誰も訪れることのない世界で、 大切な・素敵な宝石を見つけた様な、そんな感覚に襲われました。 「この描写こそがアントマンという作品の全て」といっても過言ではない、 と思ってしまえるほど。それくらい印象に残るシーンでした。

おわりに

ハリウッドの技術をふんだんに使った愛すべきB級映画でした。 とっつき辛い部分もあるけれど、思わずクスッとしてしまうシーンも多く…… 採点としては80点です。

エンディングの後にアベンジャーズ入り?しそうな表現があったので、 恐らくアベンジャーズ3が実現すれば、参戦してくるのでは無いでしょうか。 アイアンマンやキャプテンアメリカとの掛け合いが今から楽しみでなりません。

オタクはキスを大事にする - ピクセル レビュー

はじめに

先月は3回映画館に足を運んでいたのですが、 予告宣伝ムービーを観るたびに繰り返される「PAC MAN IS A BAD GUY?!」の台詞、 そして巨大なパックマンドンキーコングの映像。 一目観たときから虜になってしまい、ようやく封切りされたのを受け、映画館へ向かいました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

30数年前、宇宙人との交流を夢見てNASAが宇宙に向けて発信した映像の中には、当時大流行していたゲームの映像が含まれていた。ところが、その映像を受信した宇宙人が、友好のメッセージではなく挑戦状だと勘違い。地球が発信したゲームのキャラクターに扮して、現代の地球を侵略してくる。触れたものを全てピクセル化してしまう能力をもった宇宙人にアメリカ軍も歯が立たず、人類は危機に陥るが、ゲームオタクたちが宇宙人の弱点を見抜く。

感想/印象に残ったフレーズ

ひと言で言うと「アイディアの勝利」これに尽きるかなと思います。 30年近く前に登場したファミコンのキャラクター達が3D映像となって大暴れ! このひと言だけで観たいと思う人がどれだけいることか……とても楽しむことができました。

本作は宇宙人の侵略から世界を守というのが前提のストーリーですが、 主人公・ブレナーが過去のトラウマを克服していくのが本題です。 過去のゲーム大会、決勝戦のドンキーコングのゲームでエディに敗れ、負っていた心の傷。 その後「大事な場面になるとゴリラが上から樽を投げてくるんだ」というほどの傷を、 再度、今度は3Dの現実のドンキーコング相手に戦うことで克服していく物語です。

本作、SFなので当然なのですがとんでも設定でして。 主人公の古い友人が大統領になっているというとんでも設定だったり、突っ込み所満載です。 ですが、ソレすらもスンナリと受け入れられてしまうアタリ本作の懐の深さを感じ取れます。

さて、印象に残ったことは3つ。
 1.オタクはキスを大事にする
 2.ギャラガ
 3.ハッピーエンドの後の……
 4.BGM全般
ストーリー的には主人公と女性中佐ヴァイオレットとの恋愛もどきもありますが、 もっとも楽しめたのはアクションシーンですね。

1つ目はそのものズバリ、「オタクはキスを大事にする」の台詞ですね。 序盤にブレナーがヒロインに向かって話した後、 エンディングで再度この話をして伏線を回収するだけの話ですが。 なんというか、心にくるシーンでした。 ギークの貞操観念というか、誠実さを表した脚本。納得感が凄いですね。 それに掛け合わせた、「だからヲタクはキスが上手い」には笑いました。

2つ目にギャラガ戦のアクションシーン。 それまで軍の人達から迫害され気味だった「ワンダーボーイ」。 彼がその立場から一気にエースとして戦いに参加していく様になるシーン。 一気に主役に駆け上って行く様が最高に気分良かったですね。
そういったシチュエーションを踏まえた上で。 彼と主人公ブレナーが銃を華麗にぶっ放しまくってギャラガを破壊していく。 2人のぶっ放しっぷりや連携っぷりがとても頼もしく、見惚れてしまいました。

3つめ目は、ハッピーエンドのお笑いシーン。 ワンダーボーイは侵略してきたエイリアンの変身したレディ・リサと結婚します。 レディ・リサは彼が小さい頃から溺愛してきたゲームの女の子で、 ずっと思ってきた愛が結実した(ある意味)美しい展開だったのですが。 後日談のシーンで、2人の子供としてQバートが沢山居たのには笑いました。 Qバートが変身したレディ・リサとの子供だったからなのでしょうが、、、 このシーンは吹き出さざるを得ませんでした。

最後4つ目、BGMについてです。 全体的にBGMはとても素敵だったなぁと……。 特に出だしのアメリカ?西部劇?っぽいBGMはとても心地良かったですね。 ゲーム作品の臨場感を出すのに各ゲームのBGMが使われていたりと、面白く。要確認 劇をとても盛り上げていたと思います。

さて一方、残念だった点もあります。 ファイヤーブラスターが小人?のような人だったのは何故なのでしょうか。 全体的にヲタク蔑視な雰囲気が漂っていて、その点は好きになれませんでした。 (敢えてああいったステレオタイプな、嫌われ者のヲタク像を描いたのかもですが)

おわりに

私自身がゲーマーでドット絵ゲーム世代だったということもあり、とても楽しむことができました。 と言うわけで、本作の評価は84点です。 ドット絵や8bitの時代を知っていて、好きだった人には是非観て欲しい作品ですね。

余談ですが、こういった作品がハリウッドから逆輸入されてくるのは少し残念な気持ちになります。 本作を観るにつけ、こういった作品は日本の映画映画関係者にこそ作っていただきかったなぁと思うことしきりです。

Pixels

Pixels

愛を誰かの心に呼び起こさせることができるものは人間に値する - ted2(テッド2) レビュー

はじめに

全米はもちろん、日本でも大旋風を巻き起こした超問題作、ted(テッド)。 可愛い姿をしたクマの人形がPTAも真っ青の下ネタ全開で暴れ回る名作でした。 本作はそんなtedの続編。前作がとても気に入っていたので、期待して映画館に向かいました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

バイト先で知り合った彼女タミ・リンと結婚したテッドは、 子どもが欲しいと思うようになるが、子作りのために自分が 人間であるということを証明しなければならなくなる。 困ったテッドは美人弁護士サマンサにを雇い、法廷に乗り込むのだが……。

感想/印象に残ったフレーズ

物語が始まってまず最初に驚いたのが、テッドの親友のジョンが前作の彼女(ロニー)と 別れてしまっていて、何事も無かったかのように独り身でスタートしていること。 前作であれだけ色々あったというのに……時の流れは悲しいものですね。

そして、まさかのタミ・リンが続投&テッドと結婚。 そうです、前作tedでテッドが顔射の真似をしてドン引きしていたスーパーのレジ打ち係です。 まさか彼女がレギュラー扱いになるとは誰が予想したでしょう。

さて、本作で気になったポイントですが、以下です。
1.ヒロインのサマンサがかわいい。
2.相変わらずの下ネタ満載っぷり。
3.本作の根っこにあるストーリー、人権問題

1つ目。本作のヒロイン、サマンサ。
演じているジェシカ・バースさん、初めて見たのですが、 (とても好みでした……は置いておいて)、すごく上手い演技でしたね。 麻薬の常習犯弁護士という設定もぶっとんでいますが、 そのラりってる具合・気だるさを見事に演じきっているように感じました。

2つ目、これがテッドの本懐かと思いますが。
一夜を一緒に過ごしたジョンとサマンサに対して クールに「昨日はキスだけか?それとも指入れたの?」と聞くテッド。 このエグさがテッドですよね。思わず爆笑してしまいました。
そして、前作ではドン引きしていたタミ・リンすら、 今作ではゴリゴリにテッドワールドに参加していきます。 テッドに向かって「ママになるの超得意なんだ!!」と満面の笑みで 答える彼女の顔を忘れられません。

さて、最後3つ目。
前作はテッドとジョンとの友情にストーリーの比重が置かれていましたが、 今作ではテディベアという濁した・シンボル化した存在を対象として、 人権問題に深くフォーカスを当てています。

サマンサが裁判官の心に訴える為に試行錯誤を重ねる姿、
そして最初は弁護を断っていた弁護士ミーアンがテッドの姿に心を動かされる流れ、
最後の弁護の際にミーアンが放った台詞、
「愛を誰かの心に呼び起こさせることができるものは人間に値する」
正直本作を観て感動して泣かされるとは思いませんでした。
※そもそも期待していなかったというのもありますが……
このシーン、必見です。

おわりに

評価は83点です。
前作の壮絶な面白さからハードルが上がり過ぎていたのか、 若干期待ハズレな部分もありましたが、それでも馬鹿になって笑うことができる良作でした。

最後のシーンでテディベアを子供にプレゼントとしてあげていたので、 おそらく続編をやるのでしょうね。しかもテッドが2人3人と増えて…… 1人でも大変な有様なので、複数居たら目も当てられない下ネタワールドが展開されそうですね!
今から楽しみでなりません。