れあこん

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

【ネタバレ】衝撃のエンディングに呆然 - アベンジャーズ インフィニティ・ウォー を観てきました。

はじめに

f:id:tsuyoring:20180506105635p:plain 2015年に上映された前作から3年、アベンジャーズシリーズの最新作・第3弾が遂に登場!
シビル・ウォーで決裂したアベンジャーズへ史上最強の敵が襲いかかるストーリー。 期待に胸を膨らませ、久しぶりにMX4Dで観劇してきました。

概要

まさにオールスター作品。アイアンマンや前作で仲間入りしたスカーレット・ウィッチ、直近の作品であるブラックパンサーガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々まで登場します。
6つ集めれば世界を滅ぼす無限の力を手にすると言われる「インフィニティ・ストーン」を狙い、地球に襲来した宇宙最強の敵サノスに対して、上述のヒーロー=アベンジャーズが衝突しつつも力をあわせて戦いを挑みます。

感想 ※ネタバレ

サノスの目的とは?

f:id:tsuyoring:20180506110339p:plain 結論から言うと本作はバッドエンドです。 サノスがインフィニティ・ストーンを6つ集め、その力を解放して宇宙の全生物の半分を消滅させる、まさかの結末でした。人類の半分が消滅したのは勿論ですが、サノスのターゲットは人類だけではなく、生きとし生ける宇宙に存在する全生物でした。 頭数を半分にすることで、資源争いや貧困から解放されて残りの半数の生物は幸せに暮らすことができる——その目的を達成した彼は、自分の手で殺した最愛の娘・ガモーラの幼き日の幻影と語らいながら、これまでの自分のおこないを振り返り、染み入るように夕日を眺める……。

マーブルの映画と言ったら勧善懲悪のヒーローアクションと言う印象が強く、今回の作品も多分に漏れずCGをバリバリに駆使した超絶アクション大作でした。その点に期待して本作を観るのであれば、とても満足ができるかと思います。ですが、結末がまさかの人類敗北エンド。ゴールデンウィークもあと数日で終わってしまうという焦りから爽快感を求めて映画館に行った自分(笑)としては、後味の悪さ・胸糞悪さに包まれ呆然としてしまいました。

後味の悪さは元より、何故胸糞悪さを感じたのか?それは、サノスが彼の理想である「生物の半減」が必ずしも間違えた思想とは言えないからです。今までの勧善懲悪物であれば、単なる破壊を目的とした純粋悪であるヴィランとの対決となります。そこには主義・主張もなく、単なる白か黒かの構図となり、とても分かりやすい。ですが、本作の悪役であるサノスはサノスで主義・主張がある。彼自体が完全悪とも言えない、が、あまりに現実離れしたリアリスト。我々人類の敵であるからこそ、観客としてはそれを受け入れることは到底出来ない。その敵が勝ってしまったことに対してなんとも言えない気持ちになったのです。

足枷となった「愛」

次に、本作のテーマの1つである「愛」について。これは「人類愛」「友愛」と読み替えても良いかもしれません。本作がではお互いの為に約束・行動をするシーンが幾つも登場します。

  1. ドクターストレンジとアイアンマンがした、もしもの時にタイム・ストーンを優先する約束
  2. ガモーラがスター・ロードにした、自分がサノスの手に落ちたらスター・ロードに殺して貰う約束
  3. サノスが最愛の娘であるガモーラを崖から突き落とし、ソウル・ストーンを手に入れたこと
  4. ヴィジョンがスカーレット・ウィッチに懇願した、自分からマインド・ストーンを引き抜いて殺すこと

1.ドクターストレンジとアイアンマンの約束

f:id:tsuyoring:20180506113048p:plain ドクターストレンジとアイアンマンの約束。それは、サノスの故郷に乗り込んで戦いを挑み、もしもアベンジャーズ側が危ない状況になったとしても、『仲間は見捨ててタイム・ストーンを守ることを優先する』とドクターストレンジがアイアンマンに宣言し、アイアンマンが承知したことです。このシーンではいがみ合っていた2人が当然のように約束を交わしたのですが、終盤にアイアンマンが死にそうになっているシーンで、サノスにタイム・ストーンを明け渡し、「彼(アイアンマン)を助けれてやれ」と言うのです。論理的に考えればそのまま殺させた方が良いようなシーンですが、この2人はどこかで通じ合っていたのでしょう、まさかのタイム・ストーンを献上してしまうのです。 結果的にこのシーンが決定打となってアベンジャーズは敗北するのです。後述の3.と対照的なシーンでした。

2.ガモーラのスター・ロードの約束

f:id:tsuyoring:20180506113126p:plain サノスへ挑む直前、ガモーラは自分がサノスに捕らわれたら殺されることを望みます。スター・ロードは最初はガーディアンズ・オブ・ギャラクシー特有のおちゃらけをしていますが、ガモーラの本気を感じ取ると、それを受け入れ、熱い熱いキスを交わします(このシーンは他のメンバーに目撃されているのですが)。 その後、実際にガモーラがサノスに捕らわれ、スター・ロードに殺すように懇願します。スター・ロードは銃を撃ちたくはないが、彼女の本気の願いを受け入れ、殺した方が良いのでは?と揺れに揺れ、結果的に、引き金を引きます。その瞬間、弾丸はサノスの手によって泡へと変換されて、ガモーラを殺すことは出来ませんでした。サノスがスター・ロードへ「気に入ったぞ」と言い残し、ガモーラを連れ去るのです。

3.サノスのガモーラへの愛

f:id:tsuyoring:20180506113147p:plain サノスがソウル・ストーンを手に入れる為に訪れたヴォーミア。そこで彼が知った事実、ソウル・ストーンを手に入れるには、対象の人物が最も愛しているものを失うことが必要ということ。 サノスにはそんなものは無いと誰しもが思ったが、実は一緒に訪れたガモーラのことを義理の娘として愛していたのです。 過去に情に流された後悔したことのあるサノスは、心を鬼にして、ガモーラを崖から落とし、ソウル・ストーンを手に入れるのです。

正直このシーンの前にサノスがガモーラを愛している描写がそこまで無かったため、取って付けた感が拭えませんでした。ストーリーを進ませる為にそういった設定にした用にしか思えず、少々醒めました。とは言うものの、この辺りからサノスがただの悪役ではなく、心を持った思想家であることが分かってきます。そういった意味では重要なシーンでした。

4.スカーレット・ウィッチとヴィジョンの愛

f:id:tsuyoring:20180506113218p:plain マインド・ストーンをサノスに取られる位ならと、ヴィジョンは恋仲であるスカーレット・ウィッチに自分を殺してマインド・ストーンを殺すことを望みます。 スカーレット・ウィッチは激しい哀しみに包まれながらも、ヴィジョンの願いを受け入れ、彼を殺してストーンを破壊するのです。
彼女はサノスを左手で抑えながら、右手でヴィジョンのマインドストーンを破壊します。本作最強なのは彼女なのでは無いか?と感じるようなシーンでした。

なお、劇中では、その直後にサノスがタイム・ストーンを使ってヴィジョンに関する時間を巻き戻し、彼を生き返して額からマインド・ストーンを抉り取って6つめのインフィニティ・ストーンを手にする展開となります。この描写のえぐいこと……ヴィジョンを殺したことを無意味にさせられ泣き叫ぶウィッチ。心が張り裂けそうになりました。

こうして見ると、特に1と3が本作を象徴しているのではないかと感じます。目的のために最愛の娘を突き落としたサノスと、情に流されてアイアンマンを見捨てることが出来なかったドクターストレンジ。結果は前者はインフィニティ・ストーンを6つ手に入れて木亭を達成し、後者はサノスの手によって消滅させられてしまいました。本来、こういったヒーロー作品では最後に勝つ筈の愛(音楽家のKAN氏もそう仰っています)。それが負けてしまったということに、何とも言えない気持ちになりました。
本作の最後でニック・フューリーがキャプテン・マーベルに連絡をしたことや、名前だけ語られて登場しなかったアントマンなど、まだ未登場のヒーロー達が次回作でサノスへ再選を挑むと思われますが、その際にこの辺りの愛に関する議論への回答もあるのでは?と期待しています。

カンバーバッチの演技に惚れた

f:id:tsuyoring:20180506113250p:plain 個人的に一番の収穫はドクターストレンジことベネディクト・カンバーバッチですね。筆者は登場作品である「ドクターストレンジ」を観ていない(不覚......)ため話についていけるか不安でしたが、見るからに偏屈屋と分かるその風貌と、すぐさまソレと分かる行動と表情からすんなりと「ドクターストレンジ」というキャラクターを受け入れることが出来ました。イミテーション・ゲームの主人公アラン・チューリングよろしく見事な奇人ぷりを発揮し、これぞカンバーバッチ!と大変満足させられる演技でした。
続編の公開も決まっているようなので、こちらも今からとても楽しみですね。本作でサノスに消滅させられてしまったので、どういった時系列・ストーリーになるのかも興味深いところです。

おわりに

前述の通り、勧善懲悪ヒーローアクションを期待していた部分もあり、今回の作品のストーリーについてはとてもモヤモヤとさせられました。

サノスとの最終決戦に挑む前、ドクターストレンジは1400万通りの未来を見て、そのうち1通りしかアベンジャーズが勝つ未来が無かったと言っていました。 以下妄想ですが、、、インフィニティ・ストーンを6つ集めて生物を半分抹殺したサノスが、その行いの虚しさに気付き、全てを無かったことにして過去に時を戻して。 復活したドクターストレンジが「唯一の未来に辿り着く為に敢えて消滅したのさ」くらい言って欲しかったなと感じました。

とは言うものの、映像美はコレまで以上に素晴らしかったのも事実。スカーレットウィッチの圧巻の強さも必見ですし、能力もプライドも高い2人・ドクターストレンジとアイアンマンがサノス相手に共闘するシーンなんかは燃えに燃えました。終盤のサノスとの戦いにおける一連のアクションは凄まじいの一言です。 以上、採点は70点です。

2018/05/04 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

※画像の著作権については、© Walt Disney Studios Motion Pictures が所持しています。