れあこん

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

9番パドック、オープン! - ジュラシックワールド レビュー

はじめに

ジュラシックパークの後継作。 小さい頃に観たことはあるものの、正直朧気で、余り記憶や印象もありませんでした。 ですが、たまたま映画館で「ジュラシック」の名前を目にし、「恐竜の大暴れでも観るか!」と思い、そのまま観ることにしました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

事故の起こった「ジュラシック・パーク」にかわり、新たにオープンした「ジュラシック・ワールド」では、 ジャイロスフィアという球体の乗り物でめぐる恐竜見学や、モササウルスの水中ショーなどで人気を博していた。 さらなる人気を獲得したい責任者のクレアは、飼育係オーウェンの警告も聞かず、遺伝子操作により、 凶暴で高い知性をもった新種の恐竜インドミナス・レックスを作り出すが……。

感想/印象に残ったフレーズ

子供が好きそうな映画だな、というのが観終わった感想でした。
印象的だったのは以下のシーンです。
1.翼竜の襲来
2.オーウェンの疾走
3.インドミナス・レックスの先頭
4.戦いが終わって……

1つ目。
これがもっとも印象に残ったのですが、 翼竜の大群が市街地に押し寄せるシーンが壮絶でした。 これは凄かったですね。空から襲ってくるから常に見られている状態で。 建物の中に入っても壊して襲ってきて逃げ場がありません。 人々の恐怖がスクリーンを通じて痛く伝わってきました。

2つ目。
主人公であるオーウェンラプター達を従えて インドミナス・レックスの元に向かって疾走するシーン。格好良すぎます。 ※到着直後にラプター達に裏切られるのが切なかったですが。

3つ目。
戦闘シーンですね。これはもちろん素晴らしかったです。 ただ、インドミナス・レックス対ティラノサウルスの1on1は正直物足りなかったです。 なんというか、着ぐるみを来た人同士の取っ組み合いのように見えてしまって。 ちょっとちゃっちい印象を抱きました。

その分、ラプターティラノサウルスが手を組んで戦うシーンはとても燃えました。 1度はインドミナス・レックスの元へ裏切って行ったラプター。 最後にオーウェンの声掛けに、今までの信頼関係を思い出し、巨大な敵に立ち向かって。 そして、スピードを武器に華麗な攻撃を繰り出していくのです。 いやはや、格好良いのひと言です。胸が熱くなる展開でした。

4つ目。
最後、避難所で沢山の人が悲しんでいるシーンですね。 日本人特有だと思いますが、3.11の避難所の方々の映像を 思い出して少しホロッときました。あの地震を経験した人は、 本作に限らずこういったシーンを観る度に思い出すのですかね。

さて、以下は観ていて疑問・不満を抱いた点です。

本作、恐竜を見せる為の映画、ということは分かっていたのですが、 ストーリーは無茶苦茶……あまり意味を求めてはいけませんね。 子供2人のうち兄・ザックが好き放題して弟・グレイを危険に巻き込んでいるのに、 グレイはそんなザックを最後まで信用しきっています。 これが兄弟愛と言われると、疑問を感じざるを得ません。

また、ヒロインのクレアにしても、自分の欲のために観光客や オーウェン達を危険に追いやってしまっています。 兄弟の母・カレンからのお願いもそこそこに好き放題やった結果がこの映画です。 なんというか……もっと真面目な脚本でないと、感情移入は全然出来ないと感じました。

加えて、終盤で突然出てくるティラノザウルス。 ティラノザウルス、などと書いていますが、最後に出てきた恐竜がティラノザウルスだと いうことも、映画が終わってからネットで情報を読んでいて知りました。 9番パドックに秘密兵器が居るなんて伏線なかったので、唐突過ぎました。 前作を観ている人で無いとついていけないラストの展開に正直ガッカリしました。

おわりに

採点としては69点です。
映像は勿論凄い、文句ない、流石ハリウッド!といった感じでした。 ですが、ちょっとストーリーが適当過ぎやしませんか? 折角の大作なのに残念というか……本当もったいないですね。 もし次回作があるようでしたら、その辺りを改善したジュラシックな世界を期待したいと思います。

ジュラシック・ワールド (竹書房文庫)

ジュラシック・ワールド (竹書房文庫)

Jurassic World / O.S.T.

Jurassic World / O.S.T.

捨てなければ得られない - 進撃の巨人 ATTACK ON TITAN (実写版)レビュー

はじめに

原作ファンとして興味を抱いていた本作。 実写としてするには中々に難易度が高い内容だと思っていたのですが、 「立体駆動の演出が格好良い」 という、どこからか聞いた風の噂に絆されて観に行ってまいりました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

100年以上前、突如現れた巨人たちに人類の大半が捕食され、文明は崩壊。 かろうじて生き延びた人々は巨大な壁を三重に築き、その中で暮らしていたが……。

感想/印象に残ったフレーズ

本作、原作ファンが前情報無しに観に行くと間違いなく面食らうのではないでしょうか。 根っこの部分は原作を守っていますが、オリジナルな設定を ふんだんに盛り込んだパラレルワールドと思った方良いです。 「シキシマって誰……???」 「ミカサがエレンに対して一途じゃない。こんなのミカサじゃない」 「エレンの目の前で巨人の餌食になったのが母親じゃなくてミカサ」 という時点で原作のストーリーを踏まえる気がさらさら無いのが分かっていただけるかと思います。

後編もあるので、現時点でストーリーの是非について言及するのもナンセンスかもしれませんが、 前半だけ見て感じた思いを書いておきます。 まず、原作と違うエレンの喧嘩っ早さ・支離滅裂さについて行くのがやっとでした。 行動が突飛で理論だっておらず、感情移入は一切できませんでしたね。 シキシマという謎な登場人物については、未だに何ものなのか?というワクワクで一杯です。 彼についてはこれから、という感じなのでしょうね。とても楽しみ。 ミカサについてはもう本当良く分かりません。 ただの恋愛物なシナリオを描きたくてポジションを変えたんですかね。現時点ではガッカリです。

次に、表現について。 日本人キャストがメインで外人もおらず、街の中はまるで江戸~明治時代の様でした。 巨人が襲ってきたときなんか、江戸時代に火事でも起きたのかと思うような見た目で。 最初は違和感しか感じられず笑ってしまっていたのですが、 逆に日本の生活に落とし込んで表現することで、より実感を持って巨人が襲ってきた という危機を感じることができたのはとても良かったかなと思います。

また、原作では絵柄の関係か、色恋沙汰的な話は殆ど無いのですが、実写版だとそんな訳もなく。 極限状態での男女が居れば、そこにセックスが発生するのは自然な流れでしょう。

まず、シキシマとミカサの関係に嫉妬し絶望するエレン。 寝取られ(NTR)的な展開で叫ぶエレンには、思わず「若いねー♪」と言ってあげたくなります。笑 そして、そんなエレンを誘惑する人妻さん。 「子持ちは嫌……?」って言いながら、エレンの腕をつかんでおっぱいを 揉ませるシーンなんかは、妙に艶めかしくて良かったですね。 それ以外にも、最前線でヤっている男女の描写もあり。"人間"を良く表していると思いました。 ただ其の分、R指定でないのは良くないですね。原作ファンの子供には見せられないなと。

演出に関しては……賛否両論になりそうな気配です。 一番最初に出てきた「超大型巨人」の質感は正直微妙でした。 なんというか、ウルトラマン仮面ライダーと言った子供向け特撮を見させられている感じで。 ダサいなぁ……という思いを消し去ることは出来ませんでした。 それと対照的に、通常の巨人達については全然観ることが出来ました。 変に原作に合わせるようにすることなく、人が感じる気持ち悪いの限度で表現されていて。 こちらは素直に良いな、怖いな、と思うことが出来ましたね。

立体駆動に関して言えば、間違いなく格好良かったです。 以前から「実写で表現するのは不可能」と言われていた本仕組みですが、 本作では見事に表現しきっており、素直に格好良いなぁ!と思うことが出来ました。 ただ欲を言えば、もう少しスピード感が表現出来れば良かったなと。 私がアイアンマンなどのアクション映画に慣れ親しみすぎているからかもしれませんが、 全体的にのんびりとした感じを受けました。 1.5倍くらいのスピードで表現してくれれば、言うことなく満足だったのに……すこし残念です。

さて、演技に目を移しましょう。

もっとも印象に残ったのはハンジですね。 原作の中で随一のお気に入りキャラクターということもありますが、 誰がどんな演技をされるのか、とても不安でした。 ですが、その不安は登場シーンの奇っ怪な声とともに吹き飛ぶことになりました。 頭のネジが十本ほどぶっ飛んでるのではないかと思わせるような声のトーン。 巨人に対しての異様なまでの興味。巨人を見たときの興奮っぷり。 それらを余すことなく表現しきっていました。 むしろ、こちらが原作ではないか?と錯覚するような演技、女優さんの中での昇華っぷり。 後で石原さとみさんが演じていると知ったのですが、本当にハマり役でしたね。 素晴らしいのひと言です。

最後にBGMについて。 こちらはとても気に入りました。 特に序盤ですが、民族音楽的な牧歌的な雰囲気の曲が流れていて。 塀の中の雰囲気を見事に表現しているな……と、感心しきりでした。

おわりに

ストーリーについては正直後編次第な部分が大きいです……が。 良くも悪くも原作を換骨奪胎している点はとても評価できると思います。 その結果駄作だったとしても、良いチャレンジなのではないかなと。 現時点ではストーリーに粗も多く目に付きますが、 それを補う演出・演技・音楽がありました。ということで、採点としては68点で。

ライリーのためなら死ねる - インサイド・ヘッド レビュー

はじめに

映画館で色々な作品を観るようになってくると、必然的に開始前の宣伝広告も多くの種類観てしまうかと思います。 この作品もそんな経緯で知りました。映像の美しさ、3Dモデリングの愛らしさに心惹かれ、観ることを決意。 とは言うものの、実は私はピクサーの作品を観るのは初めてでして。期待と不安を胸に映画館に足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

ミネソタの田舎町で明るく幸せに育った少女ライリーは、父親の仕事の都合で都会のサンフランシスコに引っ越してくる。新しい生活に慣れようとするライリーを幸せにしようと、彼女の頭の中の司令部では「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」の5つの感情が奮闘していた。しかし、ある時、カナシミがライリーの大切な思い出を悲しい思い出に変えてしまう。慌てて思い出を元通りにしようとしたヨロコビだったが、誤ってカナシミと一緒に司令部の外に放りだされてしまう。ヨロコビは急いで司令部に戻ろうと、ライリーの頭の中を駆けめぐるのだが……。

感想/印象に残ったフレーズ

人の頭の中を描いた本作。
ライリーの成長につれて、彼女の中に居る感情達も成長していきます。
「ある人物の頭の中を人に見立てて表現する」というアイディア自体も面白いですが、
 ※『脳内ポイズンベリー』でもありましたね。
本作はそのアイディア・素材を余すことなく素敵に調理している印象を受けました。 記憶をカプセルで表現したり、性格をテーマパークで表したり、夢を映画作品に見立てたり。 特に記憶のカプセルが司令部内に格納される際の演出は、可愛らしいSFチックなアニメーションでとても素敵でした。

本作のストーリーは概要にある通りですが、
その中でも私にとって良印象だったシーンは以下の4つです。

  1. 悲しみの存在価値を理解する
  2. ビンボンの最期
  3. 思い出に色々な色が混ざった「特別な思い出」が存在する
  4. ライリーのためなら死ねる男を使った決死の大ジャンプ

1つ目の悲しみの存在価値を理解することについて。
序盤からヨロコビを始め、他の感情の足を引っ張るだけだったカナシミ。 ですが、途中、落ち込んでいるビンボンとの会話のシーンを経て、その存在価値が明らかになっていきます。 悲しいことは悪いことではなくて、その結果、より幸せな状況が訪れる事もあると。 ヨロコビはライリーがアイスホッケーの試合で負けたシーンを思い返しながら、そのことに気付いていくのです。

私自身、「悲しい思い出」というものを極力作らないことが大切だと思い、今までの人生を生きてきました。 ですが、そういった感情を抱いたことも含めて「思い出」として昇華することが大事なんだ、と。 起きたことを無理矢理遠ざけたり、感情を殺したりせず、あるがまま受け入れよう……そうこの映画に教えられた気がしました。

2つ目はリンドンの最期。
崖から落ちてしまい、記憶が消えていくビンボンとヨロコビ。 落ちた先・崖の底に居ると、そこにある記憶達は全て消えてしまいます。 そこから抜け出さないと、2人も消えてしまうため、元居た場所へ戻ろうと奮闘します。

ですが、ジェット機に乗って底から抜け出そうと頑張るも、 何度やってもうまくいかず、ついには時間切れなのか、ビンボンの身体が消えだしてしまいます。 自分が消滅することを悟ったビンボンは、それまでのふざけた性格ではなく、 優しい声で、諦めかけているライリーに「次は絶対成功するよ、さぁやろう」と手をさしのべます。 そして、最期のフライト。彼は自分がジェットから降りることでヨロコビを崖の上に帰すのです。 戻ることが出来て大はしゃぎのヨロコビ、ビンボンに話しかけるも、彼はいなくて。 崖の下で、それこそ大喜びのビンボン。「やったー!いけー!」と叫んでいる、そんなシーン。

とてもベタベタな展開、自己犠牲の精神は日本人にとても受ける、という事情はありますが。 本作のメインテーマである感情絡みの脚本ではありませんが、 このオーソドックスなシーンで、私は図らずもボロ泣きしてしまいました。

3つ目、これはラストシーンですね。
思い出に色々な色が混ざった「特別な思い出」が存在することについて。 それまでは単色だった特別な思い出ですが、2つ、3つ、4つ……と、 複数の色が混ざったオーブになっているのです。このシーンはとても面白い表現ですね。

人の心が成長するに連れて、それまで単純な嬉しい!悲しい!という感情だったものが、 より入り組んだ感情・思い出になっていく……それを素敵な映像で表現してくれています。 なんとも印象深いシーンでした。

4つ目はオマケですが……
ヨロコビが司令部に戻るために、ライリーの理想のイケメンを何百、何千体も作り上げ、 彼らを柱のようにして大ジャンプをするシーンがあります。

ヨロコビ自身も「ううん、普通じゃない。普通じゃないことは分かってる!」
って自分に言い聞かせながらの大ジャンプ。笑いが止まりませんでした。 この部分のシュールさ加減は是非本編を観て確かめていただきたいですね。笑

さて、どうしても頂けなかった点も挙げておかなければなりません。
それは、カナシミの声です。彼女のネガティブさ、鈍臭さは狙ったものであり、 その点は(キャラクターに対する好き嫌いは別として)上手く表現されていたと思います。 ですが、全編を通じて、その声には違和感を感じていました。

何だろう、この変な感覚……と思っていましたが、 エンドロールのキャストを見て合点がいきました。大竹しのぶさんが声優していたのです。

確かに鈍くささは表現できているなとは思いました。
ですが、「小さな子が物事をうまく出来ないでドジしている」声ではなくて、
「年をとったおばさんがぐだぐだと鈍くさいことをしている」声なんです。
この物語はライリーの心の成長の物語で、これから司令塔の住人達も一緒に成長していくはず。 それなのに、カナシミの声には「もう、しょうがないな。これから頑張れよ」と 思わせてくれるような愛らしさが微塵も感じられませんでした。

私が観た作品が日本語吹き替え+3D版だったからしょうがないのですが、
これなら英語版を観れば良かった、と残念な気持ちになりました。

※余談ですが、私の行きつけの映画館の場合、3D上映はほぼ確実に日本語吹き替えなのです。英語+日本語字幕+3Dで観れたら最高なのですが、そういう映画館ないですかね……。

おわりに

いやはや、人の心の成長を面白おかしく、素敵に表現仕切っている名作でした。 笑いあり涙あり考えさせられることあり……心の成長を経験した大人ほど楽しめる作品かなと思います。 そんな訳で本作、採点は84点とします。

物語としては、ライリーの少女時代が終わったところまででした。 まだまだ続きがありそうな終わり方をしていたので、続編にも期待出来そうですね。

※正直、ヨロコビが戻るまでで映画が終わるとは思っていなかったので、その点は残念かな。それだけあっという間の2時間でした。

愛しのライリー

愛しのライリー

「独り身は楽で良い。自由だ、責任もねぇ。それを咎めてくれる相手もいねェ」 - バケモノの子 レビュー

はじめに

細田守監督の最新作! 「時をかける少女」を皮切りとして、「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」と、 立て続けにヒットを連発し、ポスト宮崎駿の最右翼と目される細田守監督。 彼の最新作と言うことで、大いなる期待を胸に映画館へ足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

渋谷の街とバケモノたちが住まう「渋天街(じゅううてんがい)」という 2つの世界を交錯させながら、バケモノと少年の奇妙な師弟関係や親子の絆を描く。

感想/印象に残ったフレーズ

表向きは、天涯孤独の男・熊徹の成長の物語。 そして裏のテーマが、人間なら誰しもが持っている心の闇と対話するお話。

率直に言って、とても心に残る作品でした。 本作、人によって色んな見方があると思います。 小さなお子様は子供の頃の蓮視点で。思春期の若者は、成長した蓮視点で。

ですが、本作のメインターゲットはどちらかというと子供というよりは大人、 それも親になりたての方々の心にスマッシュヒットするような作品なのではないでしょうか。 かくいう私も、熊徹視点で本作を楽しみました。

子供を貰った親が、それを契機としていっぱしの人間に成長していく物語に見えました。 特に印象的なのは、九太(=蓮)に教えることで成長していく熊徹を見ながら、 多々良(熊徹の悪友)が「どっちが師匠なんだか」と突っ込むのシーン。 現実世界でも子が親を育てる場面は多分にあるよなぁと、思わず感慨に浸ってしまいました。

さて、裏テーマと書いた「心の闇」について。 バケモノの世界には、「人間には必ず心の闇がある」という言い伝えがあるという。 物語が進むにつれて伝わってくる、この言い伝えの意味。 純粋で真面目そうな楓(九太が仲の良い女子高生)にすら、 心の中にそういうものがあるという描写にはゾクッとさせられました。

結局、そういった闇に打ち克つには、人との繋がりが大事だよね、ってお話でしたが。 本作ではその闇を否定する訳でなく、全力で肯定している点が好感が持てました。

残念な点としては、ストーリー全体の流れ・オチが若干読めてしまった点ですかね。 恐らく子供達にも分かるように伏線を描いたからなのでしょうけれど、 一郎彦が、所謂フォースの暗黒面(笑)に落ちるのが序盤からバレバレでなんともはや。 客層を踏まえるとしょうがないのかなぁとも思いますが。

次に演出について。 映像という点において、一人称による演出はスゴイのひと言です。 前作の「おおかみこどもの雨と雪」の雪原を勢い良く滑るシーンでも思いましたが、 主人公なり登場人物なりになりきっての一人称での映像表現が本当素敵なんです。 今回の作品で言えば、子供蓮の低い視点に立って、渋谷の町を見渡すシーン。 これはすごいですよ。小さい頃は、確かに、世界はこんな風に見えていた。 それを心の中にありありと思い出させてくれる映像には、驚きを禁じえません。

また、本作の始まりのシーン。 炎が揺らめき、いつしかバケモノの形になり、そのバケモノが武を舞い、彼らの世界を描く。 こんな表現が出来るのか!と、手前味噌ですが感動してしまいました。 物語の冒頭って客を作品に引き込む上で最重要ポイントの一つかと思いますが、 その働きを十二分にして余りある、素敵なシーンでした。

最後に余談ですが、声優について。 芸能人が多用されていることもあって、「この人か」って分かってしまう人も多いのですが、 特に、宗師を演じている津川雅彦の存在感と言ったら。 ウサギの可愛らしいキャラクターなのに、私の中では常に津川さんイメージでした。 彼が悪い訳ではないのだけれど、特徴的過ぎる人に声をやらせるのも考え物ですね。。 あと、もう少し軽い声の人でも良いんじゃないの?って気もしました。

おわりに

映像・物語ともにとても高水準で纏まっており、 流石は細田監督・スタジオ地図と言ったところです。

採点ですが、、、本レビューのタイトルにもなっている、 「独り身は楽で良い。自由だ、責任もねぇ。それを咎めてくれる相手もいねェ」 が私の心にグサグサと突き刺さりました……というわけで、採点は高めの86点! いやはや、痛み入りました。

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時をかける少女 [Blu-ray]

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だから、私が終わらせる - アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

はじめに

待ちに待ったアベンジャーズの最新作!
アイアンマンを始め、キャプテンアメリカマイティ・ソーなどの
マーブル作品のキャラクターが大活躍する本シリーズ。
実は、私が映画をガッツリ観るきっかけになった作品なのです。
そのため、今回はとてもとても期待して映画館に行きました。
※いつもの指定席、上段最下層、中央ど真ん中のシートを
  3日前に予約するくらいの気合いの入れよう……本当に楽しみなのです。笑

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

アイアンマンとして何度も人類の危機を救い、だからこそアベンジャーズの限界を
誰よりも強く知るトニー・スタークは、自分たちの手に負えない敵の襲来に備え、
禁断の平和維持システムである人工知能「ウルトロン」を起動させる。
しかし、ウルトロンは「究極の平和」を実現するため、平和を脅かす
唯一の存在である人類の抹消を選択する。再び訪れた人類滅亡の危機に、
アベンジャーズは人知を超えたウルトロンを相手に戦うことになるが……。

感想/印象に残ったフレーズ

いやはや、序盤からクライマックス!と言った感じで息をつく暇もない2時間半。
例に違わず、マーブル作品らしく今回も大変楽しませて頂きました。

ストーリーですが、話の中心は今回もアイアンマンです。
正気でなかった(敵である双子の妹、ワンダに精神を弄られていた)し、
素性の分からないアイテムに頼った結果とは言え、トニー・スタークが
ウルトロンという人工知能、人類を滅亡させる悪魔を生み出してしまいました。
それを始末するのが今回の大筋の話なのですが、脇道に逸れまくるいつものご一行。

ハルクとロマノフの恋愛なんて要素も混じってきてさぁ大変!
彼らの恋愛に限らず、この作品は色んなメッセージを詰め込みすぎですね。
本当、ごった煮というか、闇鍋というか。ロマノフは子どもを産めない身体だったり。
キャプテン・アメリカは仕事と家庭どっちを選ぶんだ?系男子で。
(バートンの家にみんなで行く辺りも面白かったですが)
ごちゃまぜ感が半端ないです。だからこそ楽しいんだけどね。

さて、戦闘です。
アベンジャーズとウルトロンとの戦いもそうですが、途中の
アイアンマンvsキャプテンアメリカのシーンも良いですね。
お互いの譲れない信念と信念のぶつかり合い、燃えます。

また、それに関連して。途中、人工知能についての議論もありました。
所謂まっとうな人間と、マッドサイエンティストの考え方の違い。
おそらく今後現実世界でももっとホットになって行くであろうこの話題。
今回、このお話では無理矢理ソーが収めてくれました。
答えを出さずに進めたここは見事だなぁと。世間に考える余地を残したのだなぁと感じます。

アクションについては基本的には文句は無かったです、、、が。
ラスト近くで教会を舞台として戦っているときに、
勇敢な音楽とともに周囲をぐるっと回すカメラワークには笑ってしまいました。
何故だろうか、突然そのシーンだけギャグの様に見えてしまって。
1つの場面を敢えてスローモーにしているからなのでしょうか?
スポーツ中継で時々利用されるウルトラスローモーションカメラを彷彿とさせられました。
スピーディーな戦闘の方が格好良いなぁと感じました。

マイナスな面をクローズアップしてしましましたが、、、
中盤から仲間になった双子の能力・アクションはとても格好良かった!
すごいスピードでロボットを破壊し回る兄と、能力を飛ばして遠隔攻撃をする妹。
ここの演出がたまらなく格好良かったですね!
今回の主人公はある意味彼ら彼女らだったのかな?と思わせられるような作り込みっぷりでした。

最後に。
ジャヴィスから生まれたソーのハンマーを持てる超人。彼はこれからどう絡んでくるのかな?
ラストシーンがまた新たな敵が来ることを暗示するシーンだったので、間違いなく続編はあるんだろうけど。
今後に期待ですね。

おわりに

映像作品としては超一級だし、アイアンマンもとっても格好良かった!
けれど、なんというか、サプライズが特になかったのは残念でした。
楽しかったのだけれど、どこかマンネリ感を抱かずには居られませんでした。
期待が大きすぎたのかな……というわけで、採点は79点で。次回も乞うご期待!

どこがミステリー?ナチスに全ての罪を被せれば良いと思ってる駄作。 - チャイルド44 森に消えた子供たち レビュー

はじめに

たまたま早く帰ることが出来、ふらっと映画館に立ち寄ってみました。
すると、そこには『このミステリーがすごい!第1位』の触れ込みで
宣伝されている本作が。洋画でミステリーなんてあまり見たことがないので、
どんなもんだろう?という期待と不安を旨に映画に挑みました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

53年、ソ連で9歳から14歳の子どもたちが全裸で胃を摘出され、
溺死した変死体として発見される。しかし、犯罪なき理想国家を
掲げるスターリン政権は、殺人事件は国家の理念に反することから、
事故として処理してしまう。秘密警察の捜査官レオは、親友の息子の死をきっかけに、
自らが秘密警察に追われる立場になりながらも事件の解明のため捜査を開始するが……。

感想/印象に残ったフレーズ

結論から申し上げると、胸に抱いていた『不安』が的中。
駄作も駄作だったなと思います。

そもそも本作は、2時間強という枠の中に詰め込むのが難しかったのでしょうか。
犯人も最初から居る人でもなく、伏線をガッツリ敷いているわけでもなく。
ポッと突然描写された犯人を予定調和的に捕まえる流れで、なんとも残念でした。

これなら、普段地上波でやっているような日本の2時間刑事ドラマ
の方が出来としては数段レベルが上でしょう。そう考えてしまうくらい、シナリオの作り込み(もしくはその見せ方)が甘かったです。

加えて、個人的に最もいけ好かなかった点は、犯人の猟奇的な趣向が
ナチス・ドイツ(ヒトラー)が作った薬のせいで云々って話を始めた時。
罪はすべてナチスに被せれば良いと投げ出してる感が伝わってきて、
その時点で興ざめしてしまいました。
思考停止的に何でもかんでもナチスが悪いってする思想ありますよね。
別に私も彼らを支持するつもりは毛頭ないですが、いい加減食傷気味です。

途中、夫婦愛やら何やらありましたが、
私の心に残るような印象的なシーンはコレと言ってありませんでした。

おわりに

色々考えられてはいると思うのだけれど、
ストーリーも途中からポッと出の人ですし、演出自体も凄いと思う箇所も有りませんでした。そのため、採点としては53点で。
そもそも私自身がミステリーに合わなかったのかも知れません。
あえて映画として観る価値を感じない・テレビやらで観れば良いなと……。

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

こんなこと、素面のときに言えるわけない - 海街Diary レビュー

はじめに

私はほとんど邦画を観ない人です。ですが。
綾瀬はるか長澤まさみ、(夏帆、)広瀬すずという
豪華キャストに釣られ、思わず観に行ってしまいました。
ポスターも長閑な雰囲気を醸し出しており、ストーリーにも期待して挑みました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

湘南を舞台に、異母妹を迎えて4人となった姉妹の共同生活を通し、家族の絆を描く。
鎌倉に暮らす長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳の香田家3姉妹のもとに、
15年前に家を出ていった父の訃報が届く。葬儀に出席するため山形へ赴いた3人は、
そこで異母妹となる14歳の少女すずと対面。父が亡くなり身寄りのいなくなってしまったすずだが、葬儀の場でも毅然と立ち振る舞い、そんな彼女の姿を見た幸は、すずに鎌倉で一緒に暮らそうと提案する。
その申し出を受けたすずは、香田家の四女として、鎌倉で新たな生活を始める。

感想/印象に残ったフレーズ

まず始めに。
この作品は明確な「伝えたいこと」はないのだと思います。
ただただ、そこに横たわっている空気感に乗せて、人の生活を紡いでいく。
そこには人と人の愛憎があって。不倫や純愛、不思議な愛があって。
そして、生も死もあって。そんな日常が、淡々と過ぎていく。
そんな「空気のような作品だ」というのが観終わって抱いた感想です。

映像表現としては、ただただ四女の可愛らしさを描いていたなと。
特に自転車の後ろに乗ってトンネルに向かって走って行くシーンでは、
彼女の笑顔を延々とドアップで映していて。もちろん、彼女自身も
無邪気に楽しんでる様を演じきっていて素晴らしかったなと思います。

本作では、長女・次女が有名女優でとかく目が行きがちですが、
実質の主人公は彼女だったのではないかな、と思います。
※私としては釣りを愛して止まない三女が愛おしくてしょうがないのですが
 余り理解も得られそうにないので、やめておきます。

さて、本作は淡々と物語が進んでいくため感情の上下動は少ないです。
ですが、時折心に触れるような台詞を登場人物が吐きまして…それが心地良いんです。
いくつかピックアップします。

「好きな人早く作りなよ。世界が違って見えるよ」「どんな風に?」 「くそつまらないしごとも 耐えられる」

この世界の真理だな、と思いました。笑

「お姉ちゃんは仕事を全部割り切ってしているの?」 「全部を割りきってするなんて、できない」

逆にこの言葉にはハッとさせられました。 仕事だから、と鉄仮面を被って労働をすることにはいつか限界がくる。 そんなことを諭しているように感じられました。

さて、最後に以下です。

「50年経てばみんなおばあちゃんになるんだよ」

これは私だけ印象に残ったのかも知れません。
祖母が4人姉妹で、今まさにこの文脈で言われている「50年経ったお婆ちゃん」になっています。そんな彼女達は、いつも喧嘩しながら、でもどこか繋がっています。
もしかしたら、私の祖母が50年前はこの映画の様だったのだろうか?
と、逆算的に思いを馳せてしまいました。

おわりに

本作の評価、非常に難しいです。
過ぎゆく日常の描写の中で、自分の心に触れるものがある人は思いにふけり、
そうでない人にとってはただの雰囲気+ビジュアル映画なのだと思います。
私はたまたま印象深い台詞かいくつもあったので、楽しむことはできました。
採点としては62点。原作との兼ね合いもあるのかもですが、
もう少し狙いをハッキリさせても良かったのでは?と感じました。

きょうは会社休みます。 Blu-ray BOX

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