れあこん

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

ライリーのためなら死ねる - インサイド・ヘッド レビュー

はじめに

映画館で色々な作品を観るようになってくると、必然的に開始前の宣伝広告も多くの種類観てしまうかと思います。 この作品もそんな経緯で知りました。映像の美しさ、3Dモデリングの愛らしさに心惹かれ、観ることを決意。 とは言うものの、実は私はピクサーの作品を観るのは初めてでして。期待と不安を胸に映画館に足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

ミネソタの田舎町で明るく幸せに育った少女ライリーは、父親の仕事の都合で都会のサンフランシスコに引っ越してくる。新しい生活に慣れようとするライリーを幸せにしようと、彼女の頭の中の司令部では「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」の5つの感情が奮闘していた。しかし、ある時、カナシミがライリーの大切な思い出を悲しい思い出に変えてしまう。慌てて思い出を元通りにしようとしたヨロコビだったが、誤ってカナシミと一緒に司令部の外に放りだされてしまう。ヨロコビは急いで司令部に戻ろうと、ライリーの頭の中を駆けめぐるのだが……。

感想/印象に残ったフレーズ

人の頭の中を描いた本作。
ライリーの成長につれて、彼女の中に居る感情達も成長していきます。
「ある人物の頭の中を人に見立てて表現する」というアイディア自体も面白いですが、
 ※『脳内ポイズンベリー』でもありましたね。
本作はそのアイディア・素材を余すことなく素敵に調理している印象を受けました。 記憶をカプセルで表現したり、性格をテーマパークで表したり、夢を映画作品に見立てたり。 特に記憶のカプセルが司令部内に格納される際の演出は、可愛らしいSFチックなアニメーションでとても素敵でした。

本作のストーリーは概要にある通りですが、
その中でも私にとって良印象だったシーンは以下の4つです。

  1. 悲しみの存在価値を理解する
  2. ビンボンの最期
  3. 思い出に色々な色が混ざった「特別な思い出」が存在する
  4. ライリーのためなら死ねる男を使った決死の大ジャンプ

1つ目の悲しみの存在価値を理解することについて。
序盤からヨロコビを始め、他の感情の足を引っ張るだけだったカナシミ。 ですが、途中、落ち込んでいるビンボンとの会話のシーンを経て、その存在価値が明らかになっていきます。 悲しいことは悪いことではなくて、その結果、より幸せな状況が訪れる事もあると。 ヨロコビはライリーがアイスホッケーの試合で負けたシーンを思い返しながら、そのことに気付いていくのです。

私自身、「悲しい思い出」というものを極力作らないことが大切だと思い、今までの人生を生きてきました。 ですが、そういった感情を抱いたことも含めて「思い出」として昇華することが大事なんだ、と。 起きたことを無理矢理遠ざけたり、感情を殺したりせず、あるがまま受け入れよう……そうこの映画に教えられた気がしました。

2つ目はリンドンの最期。
崖から落ちてしまい、記憶が消えていくビンボンとヨロコビ。 落ちた先・崖の底に居ると、そこにある記憶達は全て消えてしまいます。 そこから抜け出さないと、2人も消えてしまうため、元居た場所へ戻ろうと奮闘します。

ですが、ジェット機に乗って底から抜け出そうと頑張るも、 何度やってもうまくいかず、ついには時間切れなのか、ビンボンの身体が消えだしてしまいます。 自分が消滅することを悟ったビンボンは、それまでのふざけた性格ではなく、 優しい声で、諦めかけているライリーに「次は絶対成功するよ、さぁやろう」と手をさしのべます。 そして、最期のフライト。彼は自分がジェットから降りることでヨロコビを崖の上に帰すのです。 戻ることが出来て大はしゃぎのヨロコビ、ビンボンに話しかけるも、彼はいなくて。 崖の下で、それこそ大喜びのビンボン。「やったー!いけー!」と叫んでいる、そんなシーン。

とてもベタベタな展開、自己犠牲の精神は日本人にとても受ける、という事情はありますが。 本作のメインテーマである感情絡みの脚本ではありませんが、 このオーソドックスなシーンで、私は図らずもボロ泣きしてしまいました。

3つ目、これはラストシーンですね。
思い出に色々な色が混ざった「特別な思い出」が存在することについて。 それまでは単色だった特別な思い出ですが、2つ、3つ、4つ……と、 複数の色が混ざったオーブになっているのです。このシーンはとても面白い表現ですね。

人の心が成長するに連れて、それまで単純な嬉しい!悲しい!という感情だったものが、 より入り組んだ感情・思い出になっていく……それを素敵な映像で表現してくれています。 なんとも印象深いシーンでした。

4つ目はオマケですが……
ヨロコビが司令部に戻るために、ライリーの理想のイケメンを何百、何千体も作り上げ、 彼らを柱のようにして大ジャンプをするシーンがあります。

ヨロコビ自身も「ううん、普通じゃない。普通じゃないことは分かってる!」
って自分に言い聞かせながらの大ジャンプ。笑いが止まりませんでした。 この部分のシュールさ加減は是非本編を観て確かめていただきたいですね。笑

さて、どうしても頂けなかった点も挙げておかなければなりません。
それは、カナシミの声です。彼女のネガティブさ、鈍臭さは狙ったものであり、 その点は(キャラクターに対する好き嫌いは別として)上手く表現されていたと思います。 ですが、全編を通じて、その声には違和感を感じていました。

何だろう、この変な感覚……と思っていましたが、 エンドロールのキャストを見て合点がいきました。大竹しのぶさんが声優していたのです。

確かに鈍くささは表現できているなとは思いました。
ですが、「小さな子が物事をうまく出来ないでドジしている」声ではなくて、
「年をとったおばさんがぐだぐだと鈍くさいことをしている」声なんです。
この物語はライリーの心の成長の物語で、これから司令塔の住人達も一緒に成長していくはず。 それなのに、カナシミの声には「もう、しょうがないな。これから頑張れよ」と 思わせてくれるような愛らしさが微塵も感じられませんでした。

私が観た作品が日本語吹き替え+3D版だったからしょうがないのですが、
これなら英語版を観れば良かった、と残念な気持ちになりました。

※余談ですが、私の行きつけの映画館の場合、3D上映はほぼ確実に日本語吹き替えなのです。英語+日本語字幕+3Dで観れたら最高なのですが、そういう映画館ないですかね……。

おわりに

いやはや、人の心の成長を面白おかしく、素敵に表現仕切っている名作でした。 笑いあり涙あり考えさせられることあり……心の成長を経験した大人ほど楽しめる作品かなと思います。 そんな訳で本作、採点は84点とします。

物語としては、ライリーの少女時代が終わったところまででした。 まだまだ続きがありそうな終わり方をしていたので、続編にも期待出来そうですね。

※正直、ヨロコビが戻るまでで映画が終わるとは思っていなかったので、その点は残念かな。それだけあっという間の2時間でした。

愛しのライリー

愛しのライリー

「独り身は楽で良い。自由だ、責任もねぇ。それを咎めてくれる相手もいねェ」 - バケモノの子 レビュー

はじめに

細田守監督の最新作! 「時をかける少女」を皮切りとして、「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」と、 立て続けにヒットを連発し、ポスト宮崎駿の最右翼と目される細田守監督。 彼の最新作と言うことで、大いなる期待を胸に映画館へ足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

渋谷の街とバケモノたちが住まう「渋天街(じゅううてんがい)」という 2つの世界を交錯させながら、バケモノと少年の奇妙な師弟関係や親子の絆を描く。

感想/印象に残ったフレーズ

表向きは、天涯孤独の男・熊徹の成長の物語。 そして裏のテーマが、人間なら誰しもが持っている心の闇と対話するお話。

率直に言って、とても心に残る作品でした。 本作、人によって色んな見方があると思います。 小さなお子様は子供の頃の蓮視点で。思春期の若者は、成長した蓮視点で。

ですが、本作のメインターゲットはどちらかというと子供というよりは大人、 それも親になりたての方々の心にスマッシュヒットするような作品なのではないでしょうか。 かくいう私も、熊徹視点で本作を楽しみました。

子供を貰った親が、それを契機としていっぱしの人間に成長していく物語に見えました。 特に印象的なのは、九太(=蓮)に教えることで成長していく熊徹を見ながら、 多々良(熊徹の悪友)が「どっちが師匠なんだか」と突っ込むのシーン。 現実世界でも子が親を育てる場面は多分にあるよなぁと、思わず感慨に浸ってしまいました。

さて、裏テーマと書いた「心の闇」について。 バケモノの世界には、「人間には必ず心の闇がある」という言い伝えがあるという。 物語が進むにつれて伝わってくる、この言い伝えの意味。 純粋で真面目そうな楓(九太が仲の良い女子高生)にすら、 心の中にそういうものがあるという描写にはゾクッとさせられました。

結局、そういった闇に打ち克つには、人との繋がりが大事だよね、ってお話でしたが。 本作ではその闇を否定する訳でなく、全力で肯定している点が好感が持てました。

残念な点としては、ストーリー全体の流れ・オチが若干読めてしまった点ですかね。 恐らく子供達にも分かるように伏線を描いたからなのでしょうけれど、 一郎彦が、所謂フォースの暗黒面(笑)に落ちるのが序盤からバレバレでなんともはや。 客層を踏まえるとしょうがないのかなぁとも思いますが。

次に演出について。 映像という点において、一人称による演出はスゴイのひと言です。 前作の「おおかみこどもの雨と雪」の雪原を勢い良く滑るシーンでも思いましたが、 主人公なり登場人物なりになりきっての一人称での映像表現が本当素敵なんです。 今回の作品で言えば、子供蓮の低い視点に立って、渋谷の町を見渡すシーン。 これはすごいですよ。小さい頃は、確かに、世界はこんな風に見えていた。 それを心の中にありありと思い出させてくれる映像には、驚きを禁じえません。

また、本作の始まりのシーン。 炎が揺らめき、いつしかバケモノの形になり、そのバケモノが武を舞い、彼らの世界を描く。 こんな表現が出来るのか!と、手前味噌ですが感動してしまいました。 物語の冒頭って客を作品に引き込む上で最重要ポイントの一つかと思いますが、 その働きを十二分にして余りある、素敵なシーンでした。

最後に余談ですが、声優について。 芸能人が多用されていることもあって、「この人か」って分かってしまう人も多いのですが、 特に、宗師を演じている津川雅彦の存在感と言ったら。 ウサギの可愛らしいキャラクターなのに、私の中では常に津川さんイメージでした。 彼が悪い訳ではないのだけれど、特徴的過ぎる人に声をやらせるのも考え物ですね。。 あと、もう少し軽い声の人でも良いんじゃないの?って気もしました。

おわりに

映像・物語ともにとても高水準で纏まっており、 流石は細田監督・スタジオ地図と言ったところです。

採点ですが、、、本レビューのタイトルにもなっている、 「独り身は楽で良い。自由だ、責任もねぇ。それを咎めてくれる相手もいねェ」 が私の心にグサグサと突き刺さりました……というわけで、採点は高めの86点! いやはや、痛み入りました。

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

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時をかける少女 [Blu-ray]

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だから、私が終わらせる - アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

はじめに

待ちに待ったアベンジャーズの最新作!
アイアンマンを始め、キャプテンアメリカマイティ・ソーなどの
マーブル作品のキャラクターが大活躍する本シリーズ。
実は、私が映画をガッツリ観るきっかけになった作品なのです。
そのため、今回はとてもとても期待して映画館に行きました。
※いつもの指定席、上段最下層、中央ど真ん中のシートを
  3日前に予約するくらいの気合いの入れよう……本当に楽しみなのです。笑

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

アイアンマンとして何度も人類の危機を救い、だからこそアベンジャーズの限界を
誰よりも強く知るトニー・スタークは、自分たちの手に負えない敵の襲来に備え、
禁断の平和維持システムである人工知能「ウルトロン」を起動させる。
しかし、ウルトロンは「究極の平和」を実現するため、平和を脅かす
唯一の存在である人類の抹消を選択する。再び訪れた人類滅亡の危機に、
アベンジャーズは人知を超えたウルトロンを相手に戦うことになるが……。

感想/印象に残ったフレーズ

いやはや、序盤からクライマックス!と言った感じで息をつく暇もない2時間半。
例に違わず、マーブル作品らしく今回も大変楽しませて頂きました。

ストーリーですが、話の中心は今回もアイアンマンです。
正気でなかった(敵である双子の妹、ワンダに精神を弄られていた)し、
素性の分からないアイテムに頼った結果とは言え、トニー・スタークが
ウルトロンという人工知能、人類を滅亡させる悪魔を生み出してしまいました。
それを始末するのが今回の大筋の話なのですが、脇道に逸れまくるいつものご一行。

ハルクとロマノフの恋愛なんて要素も混じってきてさぁ大変!
彼らの恋愛に限らず、この作品は色んなメッセージを詰め込みすぎですね。
本当、ごった煮というか、闇鍋というか。ロマノフは子どもを産めない身体だったり。
キャプテン・アメリカは仕事と家庭どっちを選ぶんだ?系男子で。
(バートンの家にみんなで行く辺りも面白かったですが)
ごちゃまぜ感が半端ないです。だからこそ楽しいんだけどね。

さて、戦闘です。
アベンジャーズとウルトロンとの戦いもそうですが、途中の
アイアンマンvsキャプテンアメリカのシーンも良いですね。
お互いの譲れない信念と信念のぶつかり合い、燃えます。

また、それに関連して。途中、人工知能についての議論もありました。
所謂まっとうな人間と、マッドサイエンティストの考え方の違い。
おそらく今後現実世界でももっとホットになって行くであろうこの話題。
今回、このお話では無理矢理ソーが収めてくれました。
答えを出さずに進めたここは見事だなぁと。世間に考える余地を残したのだなぁと感じます。

アクションについては基本的には文句は無かったです、、、が。
ラスト近くで教会を舞台として戦っているときに、
勇敢な音楽とともに周囲をぐるっと回すカメラワークには笑ってしまいました。
何故だろうか、突然そのシーンだけギャグの様に見えてしまって。
1つの場面を敢えてスローモーにしているからなのでしょうか?
スポーツ中継で時々利用されるウルトラスローモーションカメラを彷彿とさせられました。
スピーディーな戦闘の方が格好良いなぁと感じました。

マイナスな面をクローズアップしてしましましたが、、、
中盤から仲間になった双子の能力・アクションはとても格好良かった!
すごいスピードでロボットを破壊し回る兄と、能力を飛ばして遠隔攻撃をする妹。
ここの演出がたまらなく格好良かったですね!
今回の主人公はある意味彼ら彼女らだったのかな?と思わせられるような作り込みっぷりでした。

最後に。
ジャヴィスから生まれたソーのハンマーを持てる超人。彼はこれからどう絡んでくるのかな?
ラストシーンがまた新たな敵が来ることを暗示するシーンだったので、間違いなく続編はあるんだろうけど。
今後に期待ですね。

おわりに

映像作品としては超一級だし、アイアンマンもとっても格好良かった!
けれど、なんというか、サプライズが特になかったのは残念でした。
楽しかったのだけれど、どこかマンネリ感を抱かずには居られませんでした。
期待が大きすぎたのかな……というわけで、採点は79点で。次回も乞うご期待!

どこがミステリー?ナチスに全ての罪を被せれば良いと思ってる駄作。 - チャイルド44 森に消えた子供たち レビュー

はじめに

たまたま早く帰ることが出来、ふらっと映画館に立ち寄ってみました。
すると、そこには『このミステリーがすごい!第1位』の触れ込みで
宣伝されている本作が。洋画でミステリーなんてあまり見たことがないので、
どんなもんだろう?という期待と不安を旨に映画に挑みました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

53年、ソ連で9歳から14歳の子どもたちが全裸で胃を摘出され、
溺死した変死体として発見される。しかし、犯罪なき理想国家を
掲げるスターリン政権は、殺人事件は国家の理念に反することから、
事故として処理してしまう。秘密警察の捜査官レオは、親友の息子の死をきっかけに、
自らが秘密警察に追われる立場になりながらも事件の解明のため捜査を開始するが……。

感想/印象に残ったフレーズ

結論から申し上げると、胸に抱いていた『不安』が的中。
駄作も駄作だったなと思います。

そもそも本作は、2時間強という枠の中に詰め込むのが難しかったのでしょうか。
犯人も最初から居る人でもなく、伏線をガッツリ敷いているわけでもなく。
ポッと突然描写された犯人を予定調和的に捕まえる流れで、なんとも残念でした。

これなら、普段地上波でやっているような日本の2時間刑事ドラマ
の方が出来としては数段レベルが上でしょう。そう考えてしまうくらい、シナリオの作り込み(もしくはその見せ方)が甘かったです。

加えて、個人的に最もいけ好かなかった点は、犯人の猟奇的な趣向が
ナチス・ドイツ(ヒトラー)が作った薬のせいで云々って話を始めた時。
罪はすべてナチスに被せれば良いと投げ出してる感が伝わってきて、
その時点で興ざめしてしまいました。
思考停止的に何でもかんでもナチスが悪いってする思想ありますよね。
別に私も彼らを支持するつもりは毛頭ないですが、いい加減食傷気味です。

途中、夫婦愛やら何やらありましたが、
私の心に残るような印象的なシーンはコレと言ってありませんでした。

おわりに

色々考えられてはいると思うのだけれど、
ストーリーも途中からポッと出の人ですし、演出自体も凄いと思う箇所も有りませんでした。そのため、採点としては53点で。
そもそも私自身がミステリーに合わなかったのかも知れません。
あえて映画として観る価値を感じない・テレビやらで観れば良いなと……。

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

こんなこと、素面のときに言えるわけない - 海街Diary レビュー

はじめに

私はほとんど邦画を観ない人です。ですが。
綾瀬はるか長澤まさみ、(夏帆、)広瀬すずという
豪華キャストに釣られ、思わず観に行ってしまいました。
ポスターも長閑な雰囲気を醸し出しており、ストーリーにも期待して挑みました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

湘南を舞台に、異母妹を迎えて4人となった姉妹の共同生活を通し、家族の絆を描く。
鎌倉に暮らす長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳の香田家3姉妹のもとに、
15年前に家を出ていった父の訃報が届く。葬儀に出席するため山形へ赴いた3人は、
そこで異母妹となる14歳の少女すずと対面。父が亡くなり身寄りのいなくなってしまったすずだが、葬儀の場でも毅然と立ち振る舞い、そんな彼女の姿を見た幸は、すずに鎌倉で一緒に暮らそうと提案する。
その申し出を受けたすずは、香田家の四女として、鎌倉で新たな生活を始める。

感想/印象に残ったフレーズ

まず始めに。
この作品は明確な「伝えたいこと」はないのだと思います。
ただただ、そこに横たわっている空気感に乗せて、人の生活を紡いでいく。
そこには人と人の愛憎があって。不倫や純愛、不思議な愛があって。
そして、生も死もあって。そんな日常が、淡々と過ぎていく。
そんな「空気のような作品だ」というのが観終わって抱いた感想です。

映像表現としては、ただただ四女の可愛らしさを描いていたなと。
特に自転車の後ろに乗ってトンネルに向かって走って行くシーンでは、
彼女の笑顔を延々とドアップで映していて。もちろん、彼女自身も
無邪気に楽しんでる様を演じきっていて素晴らしかったなと思います。

本作では、長女・次女が有名女優でとかく目が行きがちですが、
実質の主人公は彼女だったのではないかな、と思います。
※私としては釣りを愛して止まない三女が愛おしくてしょうがないのですが
 余り理解も得られそうにないので、やめておきます。

さて、本作は淡々と物語が進んでいくため感情の上下動は少ないです。
ですが、時折心に触れるような台詞を登場人物が吐きまして…それが心地良いんです。
いくつかピックアップします。

「好きな人早く作りなよ。世界が違って見えるよ」「どんな風に?」 「くそつまらないしごとも 耐えられる」

この世界の真理だな、と思いました。笑

「お姉ちゃんは仕事を全部割り切ってしているの?」 「全部を割りきってするなんて、できない」

逆にこの言葉にはハッとさせられました。 仕事だから、と鉄仮面を被って労働をすることにはいつか限界がくる。 そんなことを諭しているように感じられました。

さて、最後に以下です。

「50年経てばみんなおばあちゃんになるんだよ」

これは私だけ印象に残ったのかも知れません。
祖母が4人姉妹で、今まさにこの文脈で言われている「50年経ったお婆ちゃん」になっています。そんな彼女達は、いつも喧嘩しながら、でもどこか繋がっています。
もしかしたら、私の祖母が50年前はこの映画の様だったのだろうか?
と、逆算的に思いを馳せてしまいました。

おわりに

本作の評価、非常に難しいです。
過ぎゆく日常の描写の中で、自分の心に触れるものがある人は思いにふけり、
そうでない人にとってはただの雰囲気+ビジュアル映画なのだと思います。
私はたまたま印象深い台詞かいくつもあったので、楽しむことはできました。
採点としては62点。原作との兼ね合いもあるのかもですが、
もう少し狙いをハッキリさせても良かったのでは?と感じました。

きょうは会社休みます。 Blu-ray BOX

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『好きなことから逃げたら後悔する』はどこに行った? - 台風のノルダ レビュー

はじめに

会社からの帰り道。
ふと映画館に立ち寄りポスターを見ると綺麗目な絵柄の作品が飾られていまして。
気になってネットで調べてみたところ、
 ・ジブリ出身の方が監督をされていること
 ・「好きなことから逃げたら後悔する」というフレーズ
にヤられまして、即決で観に行くことにしました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

とある離島の中学校を舞台に、少年同士の友情を描いた青春劇。
文化祭前日、島に観測史上最大の台風が接近するなか、
幼い頃から続けていた野球を辞めたことがきっかけで親友の西条と
ケンカした東は、突然現れた赤い目をした少女ノルダと出会う。

感想/印象に残ったフレーズ

率直に申し上げますと、駄作でした。
本上映ですが、45分間の短い上映にも関わらず前半1/3強が別作品でした。

前半の作品は『陽なたのアオシグレ』。思春期に入る以前の、
子どものほのぼのとした恋心を描きたかったのかなぁと思います。
ですが、ニマニマしている表現や妄想が思いの外気持ち悪くて。
成功前提でのあの主人公の暴走っぷりや、最終的に何も言わない温さは
観ていて気分の良いものではありませんでした。

ただ、後半以降のぶっ飛びっぷりはとても面白かったですね。
主人公の描いた絵の鳥に乗ってヒロインを追いかけるシーンの表現は素晴らしくて。
監督さん、元アニメーターの面目躍如といったところでしょうか。
それにしても、本当はギャグ漫画だったのかな?思わず笑ってしまいました。

さて、タイトルにもなっている、本命の『台風のノルダ』。
こちらも率直に申しまして、楽しかったとは言いづらい作品でした。

監督さんが自分の描きたい部分・伝えたい部分しか描いていない印象を受けました。
言ってみれば、起承転結の起と結しかありません。
30分弱という時間は物語を掘り下げるには短すぎたと思います。

男の子2人の友情だってもっと丁寧に描かないと理解できないし、
ヒロインの女の子についても、初見のシーンの後唐突に仲良くなっていってるし。
ノルダは結局何がしたかったの?何で戻るの?釈然としませんでした。
短いなら短いなりに納得のいく展開をして欲しかったですね。
「好きなことから逃げたら後悔する」の台詞も放り投げっぱなしでしたし。
そんなこんなで、ストーリー的には不明な点や矛盾点が盛りだくさんでした。
※厨二な物語は私的に大好物なのですが、それを差し引いても厳しかったです。

極めつけは、男の子2人がお互いがお互いを認め合うシーン。
声優が棒なんです。とっても棒読みなんです。
一番盛り上がるシーンなのに……本当ガッカリしました。

おわりに

絵はとても綺麗だし、アニメーションもぐりぐりステキなんです。
ですが、肝心のストーリーがお粗末なことこの上なく……採点としては36点で。
新井陽次郎監督、今後どうするのでしょうか。
個人的には、美術面に特化して、新海誠監督のように、
その強みを尽きてつめていってくれたら面白い、、、のかな。

採用条件は、ドリーマー【Dreamer】 - トゥモローランド / Tomorrowland レビュー

はじめに

ベイマックスやらアナと雪の女王やら、 大ヒットを飛ばしまくっているディズニーから最新作が届きました。 その名も「トゥモローランド / Tomorrowland」。
ウォルト・ディズニーが遺した、“最大の謎にして最高のプロジェクト”という 謳い文句に惹かれ、劇場に足を運んできました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

宇宙飛行士を夢見る17歳の少女ケイシーは、ある日、自分の荷物の中に見慣れないピンバッジが紛れ込んでいるのを見つける。ピンバッジに触れたケイシーは、テクノロジーの発達した未知の世界「トゥモローランド」に迷い込むが、ほどなくして元の世界に戻ってきてしまう。そんな彼女の前にアテナと名乗る謎の少女が現れ、「再びトゥモローランドに行きたければ、フランクという男を訪ねろ」と言う。このことをきっかけに、ケイシーは人類の未来をかけた冒険に出ることになる。

感想/印象に残ったフレーズ

実は今回、本編の内容について一切事前情報無く観に行ったんですね。 なので、フランクがジェットパックを操ったり、ロボットの女の子が登場するのを見て、
 「チャッピーに続きまたロボットものかよ!」
 「イミテーション・ゲームやブラックハットに続きまたエンジニアものかよ!」
といった思いに駆られました。私的には大好物なのでむしろ大歓迎でしたが。笑

ストーリー的には王道も王道のSF冒険アクションでした。ケイシーが地球を救うために奮闘する物語……という触れ込みでしたが、蓋を開けてみたらフランクの方が主人公っぽかったですね。ロボットであるアテナに恋をして挫折し、失意のまま地球へ強制送還。そこから紆余曲折経てケイシーと協力してトゥモローランドへ向かい、地球を救う。熱いですね!ところどころ黒ディズニーも出ていましたが、全体的に安心して観ていられました。

そのため、そのまますんなり(ストーリー的に違和感を感じるような部分もなく)エンディングを迎えて。チャッピーもそうでしたが、テクノロジーのある未来を肯定的に描いて終わる作品が最近多いと感じています。本作も、次世代アテナを地球に送り込んでエンドを迎えた訳ですが。不思議な感じがしました。むしろその感覚こそが違和感なのかも。一昔前にはこういった作品群はそんなに無かったように感じます。

人にフォーカスを移しましょう。ケイシー役のブリット・ロバートソン、とても可愛かったですね!諦めない心、という言葉が今回のキーワードの一つでしたが、それを良く表していたと思います。目力の強さがピッタリですね。特に、NASAのロケット施設取り壊しのシーンで「考えるより諦めるのが簡単だから」と話す彼女にはゾクゾクするものを感じました。

さて、忘れてはいけないのがBGM。程よく近未来的な感じとノスタルジックな雰囲気をあわせもった曲が延々と流され続けておりまして。この感じこそが「トゥモローランド」なのだな、と実感させられます。映像が話題に上がりがちな本作だと思いますが、負けず劣らず音楽も素晴らしかったですね。 個人的には、全体的に2013年版のシムシティの曲にとても似ていたと感じました。
※今見返して見たら、映像演出やら未来都市の雰囲気やらも本作に似ていますね。笑

おわりに

毎度のことですが、こういった作品を観るとエンジニア魂がゆんゆんに刺激されますね! フランクの生き様、そしてケイシーの諦めない心。最後まで成し遂げることの大切さ。 子ども向け映画にも見えますが、大人が観ても、むしろ大人こそ心にクる作品なのではないでしょうか。 採点は86点とさせてください。

余談ですが、ロボットやら人工知能やらAIやら、未来を描いた作品を観ると、 ネットで出回っているドラえもんの最終回の同人誌のこの台詞を思い出します。
「君たちは知っているはずだ "ドラえもんが来た"未来の時代に
 繋がるにしては進化のスピードがあまりにもゆるやかだと」
昨今のIoTブームの背景には、現代を生きる最先端の経営者・リーダーの焦りを感じずに居られません。
※その流れが、テクノロジーやスタートアップの世界を超えて、映画など文化系の方面にまで波及してきたのかなと。