れあこん

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アプリケーションエラー発生 - 瓦礫のソフィー / 獣の仕業 感想

はじめに

立夏さん主宰の獣の仕業。
出口なし以来約半年ぶりの公演、そして、今まで彼ら彼女らが演じたのを観たことがないSFというジャンルでの挑戦ということで、是非観に行かねば!と思った次第です。
あらすじを読んだ際に厨二心がとてもくすぐられたこともあり、大変楽しみに伺いました。

概要とか

いきなりネタバレですが、結果的に"A"の心の中に終始するお話です。人の病気が科学の進歩でなくなり、人の記憶の正体が判明し、共有・再利用出来るようになった世界。その世界で、どうにもならない病を起こす現象"虹"が出現した。そんな背景でストーリーは進みます。

本作、何が良いって、キャラクターやら固有名詞やらの名称が大変興味深い。
脚本を書かれた方がエンジニアだからなのでしょうか、一々SE心をくすぐるのです。登場人物名前がnullだったりarrayだったりkeyだったりして、何ともニヤニヤしてしまいます。また、他の人とソフィーを共有するための手段の名前がシーケルなのも良いですね。Sequel、SQL。IT業界では情報の格納・取得をするための手段として用いられるLanguage。ズバリです。そして最後に、人の魂が集う『トーラ』。これは北欧神話の『Thor』らなのかな?とか勝手に思いながら観ていました。
(但しThorが何の神なのかは分からず……帰宅して調べても???なので、残念ながら関連性は無いのでしょう。。)

印象的なシーン

いろんなメッセージが込められていると思います。
・ソフィアで記録できない『トーラ』との邂逅、その共有出来ない感。
 何でもかんでもシェアリングされてしまう現代に対する警鐘。
・人類が進化に向けて見境無くモラルなく歩を進めていくことへの警鐘。
とか。なんとも表層的な箇所ですが、、、

以下個人的に印象的なシーンを2つ。

1つ目、"A"が死ぬ間際のシーンで、"Z"に話した内容。
「残りの人生を、死んでしまった人達を覚えていて、思い出し続ける」的な台詞があったかと思います。これは僕にとってはとても大事な言葉で。漫画『ワンピース』の中にも、近しいこんな台詞がありました。
「人はいつ死ぬと思う?(中略)人に忘れられたときさ!!!」
ちょっとニュアンスは違いますが。"A"のその思いの大切さ、それはとても共感できるものでした。

2つ目、最後に"Z"が"A"の様な様々な思いを受け継いで行きたい?的な話をしていたかと思います。この悲しい思いは共有されて後生に受け継がれ続けるべきものなのか?これは難しい問題だなぁと。触れられたくない、忘れ去りたいという思いがある一方、そういった思いに触れることで教訓として行きたい、といった考え方もあって。それこそ"A"が閉じていた心を無理矢理広げたことが良かったのかは誰にも分からないですし。結局、答えなんかその場その場で全て違っていて普遍的なもの何て何も無いんでしょう。

演者さんについて

keyの演者の方は初めて観たのですが、今まで私が見て来た獣の仕業にない、どっしりとした落ち着きを作品に与えていたように感じました。

そして、"A"の人。
ヴェニスの承認や出口なしで観てはいましたが、全然違う演技で驚きでした。あんな引き出しあるんだ、と、感心し切り……偉そうですね……感動し切りでした。

あと、金髪の方、時々声が声優っぽくなるのですね。可愛いなぁと感じる声と、野太い迫力のある声と。意図的に発生をぶらさせているんでしょうか、凄いですね。

音楽

素敵。毎度ながら素敵。最後、波の音で終わるあの感じ。全然別作品なのですが、DramaticCompany Inhighsの『祝福』の、船底に居るような重たい雰囲気がフューチャーされている様に感じました。

おわりに

獣の仕業×SF作品。
カレーに牛乳と言いますか、生ハムにメロンと言いますか。私の印象では共通点・交点を事前に感じられることが出来なかった組み合わせで、どんな作品を魅せてくれるのだろう!と不安と期待を胸に観劇したのですが。とても美味しく調理されていて、なんとも食べ応えのある味でした。

シェイクスピア原作の際に発生する既存の台詞をミキサーシェイクで混ぜ合わせた様な、とても潔い、ある種乱暴なまでの勢い・表現は成りを潜めていて。序盤で詳細に舞台背景を説明してくれているので、恐らく今までの観劇した中で一番すんなり頭の中に入ってきました。あまりにも丁寧だったため、設定の説明だけでお話全てが終わってしまうのでは……という良く分からない不安を感じてしまう程でした。実際、物語の時系列が進んでいくようなストーリーではなかったため、それに近しかったですが。。

個人的には『トーラ』が気になって仕方なかったです。勝手に『バケモノの子』のラストシーンで出てきた鯨のようなものをイメージしていました。脚本に演技に刺激され続けた想像力が為させられた技なんでしょう。自分が普段映画ばかり観ているからかもしれませんが、3D映像で観てみたい強く感じました。是非映像化の暁には透き通った、きらきらと儚く仄かに輝く魚の群れを観てみたいです。

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