れあこん

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こんなこと、素面のときに言えるわけない - 海街Diary レビュー

はじめに

私はほとんど邦画を観ない人です。ですが。
綾瀬はるか長澤まさみ、(夏帆、)広瀬すずという
豪華キャストに釣られ、思わず観に行ってしまいました。
ポスターも長閑な雰囲気を醸し出しており、ストーリーにも期待して挑みました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

湘南を舞台に、異母妹を迎えて4人となった姉妹の共同生活を通し、家族の絆を描く。
鎌倉に暮らす長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳の香田家3姉妹のもとに、
15年前に家を出ていった父の訃報が届く。葬儀に出席するため山形へ赴いた3人は、
そこで異母妹となる14歳の少女すずと対面。父が亡くなり身寄りのいなくなってしまったすずだが、葬儀の場でも毅然と立ち振る舞い、そんな彼女の姿を見た幸は、すずに鎌倉で一緒に暮らそうと提案する。
その申し出を受けたすずは、香田家の四女として、鎌倉で新たな生活を始める。

感想/印象に残ったフレーズ

まず始めに。
この作品は明確な「伝えたいこと」はないのだと思います。
ただただ、そこに横たわっている空気感に乗せて、人の生活を紡いでいく。
そこには人と人の愛憎があって。不倫や純愛、不思議な愛があって。
そして、生も死もあって。そんな日常が、淡々と過ぎていく。
そんな「空気のような作品だ」というのが観終わって抱いた感想です。

映像表現としては、ただただ四女の可愛らしさを描いていたなと。
特に自転車の後ろに乗ってトンネルに向かって走って行くシーンでは、
彼女の笑顔を延々とドアップで映していて。もちろん、彼女自身も
無邪気に楽しんでる様を演じきっていて素晴らしかったなと思います。

本作では、長女・次女が有名女優でとかく目が行きがちですが、
実質の主人公は彼女だったのではないかな、と思います。
※私としては釣りを愛して止まない三女が愛おしくてしょうがないのですが
 余り理解も得られそうにないので、やめておきます。

さて、本作は淡々と物語が進んでいくため感情の上下動は少ないです。
ですが、時折心に触れるような台詞を登場人物が吐きまして…それが心地良いんです。
いくつかピックアップします。

「好きな人早く作りなよ。世界が違って見えるよ」「どんな風に?」 「くそつまらないしごとも 耐えられる」

この世界の真理だな、と思いました。笑

「お姉ちゃんは仕事を全部割り切ってしているの?」 「全部を割りきってするなんて、できない」

逆にこの言葉にはハッとさせられました。 仕事だから、と鉄仮面を被って労働をすることにはいつか限界がくる。 そんなことを諭しているように感じられました。

さて、最後に以下です。

「50年経てばみんなおばあちゃんになるんだよ」

これは私だけ印象に残ったのかも知れません。
祖母が4人姉妹で、今まさにこの文脈で言われている「50年経ったお婆ちゃん」になっています。そんな彼女達は、いつも喧嘩しながら、でもどこか繋がっています。
もしかしたら、私の祖母が50年前はこの映画の様だったのだろうか?
と、逆算的に思いを馳せてしまいました。

おわりに

本作の評価、非常に難しいです。
過ぎゆく日常の描写の中で、自分の心に触れるものがある人は思いにふけり、
そうでない人にとってはただの雰囲気+ビジュアル映画なのだと思います。
私はたまたま印象深い台詞かいくつもあったので、楽しむことはできました。
採点としては62点。原作との兼ね合いもあるのかもですが、
もう少し狙いをハッキリさせても良かったのでは?と感じました。

きょうは会社休みます。 Blu-ray BOX

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