れあこん

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話すにしろ書くにしろ、『ああすれば良かった』が一番悲しい - チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密 レビュー

はじめに

ふと久しぶりに映画を観てみたいと思い、映画館で物色していたところ発見。 私自身経済系バトルが好みということもあり、絵画を巡る頭脳戦なのかな?と期待しつつ鑑賞しました。 (実際は大違いでした。)

概要

英国貴族の主人公であるモルデカイが、何ものかに盗まれたゴヤの名画を追い求めてヨーロッパからアメリカを舞台に捜索するストーリー。 モルデカイは莫大な借金を抱えているのだが、ゴヤの名画には莫大な財産へ繋がる文字が刻まれており、 それを手にすることで金策を労しよう、というのが主なお話でした。

感想

英国貴族のクソっぷりを描いた、清々しいまでのB級傑作でした。 当初期待していたシリアスな経済系アクション映画からは程遠かったですね。エロ&下品満載のコメディ映画。

とてもだらしない性格モルデカイだけれど、何故かどこに行っても失敗する気がしない。 セガール映画を観ているかのような錯覚に陥りました。「この人、どうせ負けないんでしょ」的な。 この人に対する感じ方で評価が分かれそうですが、私はとても好きじゃなかったので、受け付けませんでした。

ただ、主人公の従者のジョックはとても良い味を出していましたね。 主人へ絶対服従しつつ、好き放題女性関係を持って。渋くてとても味のあるキャラクターだったなと思います。

印象深いのは、主人公と大学時代からの腐れ縁の刑事、マートランド。 主人公の妻にずっと思いを寄せながら、上手いこと躱され+逆に利用されつつも、結局そのことに喜びを感じてしまう。 本当に駄目なヤツだな、と思いつつ、ある種の人は誰しもそんな時代あったよね、って共感もしつつ。 (彼が主人公の妻に告白しようとして部屋に入ったら、2人が真っ最中だったクダリは中々に味わい深かったですね。)

そんな彼の人生を踏まえた上で、ラスト前、部下に 「話すにしろ書くにしろ、『ああすれば良かった』が一番悲しい」 と会話したシーンは本作品屈指の名場面だったかなと思います。このシーンだけで観た価値がありました。

最後に

この作品、米国と英国、どちらの国の方が作ったんですかね? 米国人が作ったのであれば英国人を好き放題馬鹿にした作品、 逆に英国人が作ったのであれば、骨の髄まで貴族観に満ち溢れている(ある種差別的ですらある)作品だなと。 ここら辺の国の成り立ち含めて、ほんの少し味わい深い面もありました。ほんの少し。というわけで52点です。赤点ギリギリ。