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れあこん - Rare Cheesecake Complex

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

どうか乾杯を 夢追い人に / ラ・ラ・ランド レビュー

はじめに

エマ・ストーンが主演している本作。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』における小悪魔な演技がとても好きで、以来彼女のファンとなってしまいまして。今回は主演女優ということで、彼女の演技を楽しむために映画館に足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

オーディションに落ちて意気消沈していた女優志望のミアは、ピアノの音色に誘われて入ったジャズバーで、ピアニストのセバスチャンと最悪な出会いをする。そして後日、ミアは、あるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンと再会。初めての会話でぶつかりあう2人だったが、互いの才能と夢に惹かれ合ううちに恋に落ちていく。

感想

まず、出だしのミュージカルで度肝を抜かました。 高速の渋滞で人々が乗る車群を映しているのですが、気付くと女性がクルマから飛び出して踊り出して。 何が始まるのかと思いきや、渋滞に捕まっている人々から人が次々と降りてきて一大ミュージカルとなってしまうのです。

突拍子も無い始まり方ですが、この勢い・音楽・流れが正に本作を良く表しています。

セバスチャンとミーアが運命的な何度かの邂逅を経て、惹かれ、恋仲となっていく、 この辺りの展開をほぼ全て音楽に乗せてたミュージカル調で描いていくのがとても興味深いです。

さて、ストーリーとしては2人の熱々な雰囲気に序盤はずっとヤられっ放しです。 ミーアがセバスチャンの夢であるジャズバーの名前を『CEBE'S』にしよう!って提案したりして。 特に2人が科学館でデートをするシーンでは、2人が宇宙に飛び出してダンスを踊る。 B級映画ここに極まれり、と言った具合で、この辺りは正直盛り上がりに欠けます。

ですが、ここを乗り越えられるかどうかが分かれ目……どうにか堪えてみていただきたいところです。 本作は単なる恋愛物語では無く、主人公の2人の男女がそれぞれの夢を追いかける夢追い物語でもあり、 それがこの後のストーリーをとても味わい深いものにしているのです。

セバスチャンは旧友のキースからの誘いで自分の情熱を殺してお金のために働くようになります。 そのことで仲違いし、別れて……けれど、セバスチャンがミーアを夢である女優へと繋ぐ役目を果たして、 結果的に2人はお互いに納得のいく形で未来へと進むことになります。

そして月日は流れ5年後。
2人の夢追い人が別れて5年後。え、いきなり5年後??と驚くのも束の間、更なる驚きが。 女優になるという夢を果たしたミーアが、家に帰ると、そこには子供と家族と、旦那——セバスチャン以外の男が居るのです。 5年の月日はミーアを新しい人生へと押し流してしまいました。

そんな感傷に浸る間もなく、旦那とミーアがドライブで外食へ行くのですが、 たまたま入ったの名前バーが『CEBE'S』。そう、ミーアがその昔に提案した名前のお店だったのです。 ステージ上にいるセバスチャン、彼が演奏する直前に、ミーアに気づきます。何て残酷な、ボタンの掛け違えなのでしょう。

ですが、彼が演奏を始めた瞬間から、全ての記憶がやり直されます。 2人の最悪な出会いは、口付けからの最高の始まりに。 仲違いした理由であるキースの誘いは華麗にスルーし、大失敗したミーアの1人芝居は大成功して。 5年後も勿論旦那としてセバスチャンがミーアと仲むつまじく過ごして…… 掛け違えたボタンの、すべての答え合わせを見ているような。たら、ればをすべて実現したような。 そんな、たどり着けなかったハッピーエンドを描いていて、何とも目頭が熱くなります。

完璧に幸せな人生を過ごしている人は少なく、どんな人でも「あの時こうしていたら」「こうしていれば」 と言った感情を何処かで持ち合わせているもの。そんな、多くの大人の心の奥にある感情を大きく揺さぶるシーンでした。

さて、全てを見終えたミーアは、すぐさま店を出ます。最後に振り返り、セバスチャンと目をあわせて。 ほんのほんの少しの微笑みを讃え、直後、唐突に『The END』の文字とともに本作は終わります。 タイミングも申し分なく、エンドロールで流れる曲で余韻に浸らせるという、完璧な終わり方でした。

おわりに

今作、色々と難癖を付けたい部分も多々あります。 序盤、ミーアが彼氏がいるのに平気でセバスチャンとデートしたり、セバスチャンはセバスチャンでバーの看板を豪快に壊すなど、自己中なシーンでいらっとしたりもします。そして、前述の通り、B級映画全開な演出もあります。

ただ、全編を通じて、曲にあわせて踊り出す・ミュージカル的な演出はとても挑戦的で悪くないと思いました。 そして、何より。最後の追い込み・畳み掛けは圧巻の一言。筆者はボロ泣きしてしまいました。本作がアカデミー賞の最有力と言われている理由を知らしめられた気がしました。と言うわけで、採点は91点です。

夢を追うという、人間誰しもが持つ思い。そして自分の好きな人と一緒に幸せに過ごしたい、という思い。恐らく永遠のテーマであるこの要素の旨味を上手に料理仕切った名作だと思います。

2017/02/24 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎