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れあこん - Rare Cheesecake Complex

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

人間は求めていい - 現実を視よ 書評

はじめに

ファーストリテイリング柳井正さんが書き記した本作品。 会社の推薦図書に挙げられていました。 思想的な図書が推薦されることは余りありません。 その珍しさから興味を持ち、読むに至りました。

結論、今後、経済(、政治)を支えていく日本人であれば 誰であろうと読んだ方が良いと感じられる良書でした。是非オススメします。

概要

『この本を書くことは、一経営者としては正しい判断ではないかもしれない』 帯に書かれているこのキャッチコピーの通りです。 経営者を安全に今後もおこなっていくことを最優先するのであれば、こんな本は書かないでしょう。

柳井正さんの熱い思いがこの本には詰まっています。 失われた20年と叫ばれている現在の日本を憂い、そこからどう抜け出すのか? そもそも、抜け出す必要があるのか、といった精神論から、 東南アジアの人々の生き様、韓国や中国の躍進を踏まえ、今後日本はどうして行くべきなのか? といったアクションについて、延々とその思いが詰まっています。 その中には、官僚批判や政治批判も含まれています。 そのような書籍を今経営をおこなっている真っ最中に出す心意気、大和魂。彼の思いを感じずにはいられません。

感想/印象に残ったフレーズ

前項にも書きましたが、柳井正さんの日本を思う気持ちが痛いほど伝わってくる本書。 その中でも、特に私の心にグサッと刺さった箇所をピックアップしました。

ほんとうならそこで日本人は夢から醒め、覚悟を決めるべきだった。余剰人員を抱えた債務超過起業を整理して、 古い産業構造の転換を図り、バブルのツケを積極的に払わなければならなかった。 未来に向かって第一歩を踏み出す必要があったのである。 しかし、日本はそれをしなかった。 バブルの残り香に良い、相変わらず自分たちは金持ちだと勘違いしたまま、努力もしないまま、 このまま現状が続くはず、場合によっては、またバブルが来るのではないか-と思ってしまった

失われた20年が生まれた理由が、この箇所を通じて良く理解出来ます。 本当は目を向けなければ行けない現実から目を背け、希望的観測にすがりついていた。 結局そんな物は来ず、未来の子ども達は大きな代償を背負うことになっていった。それが現代ですね。

かつて先進国と発展途上国とを分けていた「格差」も、完全に解消された。 いまや新興国にハンデはまったくない。逆に言えば、先進国にも優位性はないことにある。 インターネットが発達し、情報化社会となった現代では、先進国も発展途上国も関係なく、 ただただ「実力がある」ものが生き残り、成長していく弱肉強食の世の中となっていく。

数年前、IT業界では開発業務の海外アウトソーシングが進み、中国での開発が増えました。 もはや日本国内だけの競争ではなく、それこそ世界の人達との戦いに買って行かなくてはいけないのです。 余談ですが、今では中国での開発すら(経済が発達し、賃金が上がったため)高くなり、次はベトナムなどへ流れていっています。 中国は既に「安く発注される」ステージを終えてしまったということを意味しています。末恐ろしいですね。

さらに余談ですが、ここの箇所とかなりリンクする内容を、 ホリエモンこと堀江貴文さんが近畿大学の卒業式でスピーチされています。 世の中の最先端を行く者同士、やはり感じるところは同じということでしょうか。 ※ただ、柳井正さんは本書の中でホリエモンのことを一刀両断しています。これも中々面白いですよね。

「資本主義の精神」を忘れていくなかで、この国はいつの間にか、 お金は稼ぐものではなく、貰うもの、という意識が蔓延してしまった。

この一節には私は物凄い衝撃を受けました。 今までサラリーマンとして安穏と暮らしてきた生活そのものが間違えていた、ということ。 かなりきわどい内容ですが、日教組の教育などの影響で日本人が牙を引っこ抜かれていったこと。 結果、活力が失われ、努力をすることが馬鹿らしい社会(そしてシステム)になっていったこと。 さまざまな経緯を経て、そのような状況になってしまい、自分も順応しつつある状況に呆然としてしまいました。

※本書では、サラリーマン期間を起業のための準備期間とするなら良い、と述べています。
※起業を志す身としては、この認識を強くしておかなければ……と私事ながら強く思い、誓いました。

おわりに

日本をより良くしていく。その目的のために書かれた本書。柳井正さんの考えは良く伝わりました。 ただ、そこからどう具体的なアクションに落とし込む、という部分の具体性は余りなかったかな、と感じました。 よって、採点としては76点です。ToDoとして、というよりは、気持ちを昂ぶらせるために読む書籍かなと思います。

さて、本書の中で大阪の橋本徹市長のことを絶賛していました。 ですが、つい先日の大阪都構想の選挙で敗北し、政界を引退すると発表しました。 このことは残念でなりませんね。良くも悪くも有言実行してきた方だったので、 これで日本の政治の正常化はまた10年、20年と遅れることになりそうだ、と、ゲンナリとした気持ちになりました。

現実を視よ

現実を視よ