れあこん

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人工知能とロボットの邂逅、IoTとAIの行く末 - チャッピー レビュー

はじめに

イミテーション・ゲームを観たときかな? 劇場予告で面白そうだなぁと感じて観るに至りました。 人工知能絡みの近未来ロボットアクションと思い乗り込みました。 AIとは?人工知能の暴走はあるのか?といった内容を期待して行きました、が。 内容的にはある部分では深く、ある部分では浅く。中々に面白い内容でした。

概要

天才技術者であるディオンが秘密裏に作っていた人工知能。 会社から盗んだロボットにインストールしたが、そのロボットがギャングに盗まれる。 ギャングに育てられたロボットが悪さを重ねていくが……といった内容のストーリー。 南アフリカを舞台としており、ハイテクと修羅の国のコントラストがとても良い感じでした。

感想/印象に残ったシーン

今最も旬な話題である、IoTと人工知能=AI。 これから先の情報産業、行く末を描いている作品のように思えました。

チャッピーの成長のシーンはとても興味深く面白く、本当にこんなAIが出来るのかな? という希望に満ちた気分で楽しく観ることができました。 人間の赤ちゃんのように学んで、ただそれは物凄いスピードで。 周囲の人間の教育でいかようにも変わる様もそうですが、人間そのもの、 いやむしろ人間よりも純粋な存在として描かれていました。こんなAIが出来たら未来はステキ。

それと対照的だったのが、ディオンの同僚。自分の私利私欲の為には何でもする。 オーストラリアの軍隊で働いていた彼を観るにつけ何とも言えない暗い気分に。

加えて、明らかにエンジニアに似ても似つかない体格と、性格。 終盤でディオンの頭を机にたたきつけ、銃で脅すシーンなんて最悪ですよね。 私の会社でもそういう輩が多い、ということもあり、なんとも言えない気分でした。 傍観者というか、そういう技術のある人を使い込んで上に登ろうとする筋肉系・チャラ系な方々が。

リアリティがあってとても良いですが、反面、 (映画の出来・不出来とは関係ないとこで)気分が良くなかったなぁと。 ブラックハットの際にも思いましたが、生々しさを出すのって難しいですよね。 ※逆に、ブラックハットの場合はムキムキな方をエンジニアに選んだのはミスチョイスだと感じてます。 ※その点、イミテーション・ゲームやソーシャル・ネットワークはリアリティがあって良いですね。

また、この作品、AIが暴走するようなことは一切想定されていないんですよね。 結局同僚さんの作ったマシーンは「判断できる人間が使う」ことをウリとしながら、 その人間自体が(1人目触った人=同僚)から糞だったため、物にならなかった。 翻って、ディオンの作ったAIは(チャッピー以外でも)制御通りに動き続けた。 この辺りに、AIという技術に対する脚本家の絶対的信頼がある・そういう思想だということが透けて見えました。 私個人はこの考え方好きなのですが、世間が求めているのはAIそのものの暴走じゃないかな?と思っているので、 その点で本作が受け入れられるのか?は興味深い所です。

さて、以下は人の意識について。 思考そのものの解析をチャッピーがおこない、 終盤でディオン自身がその仕組みを使ってロボットに意識を転送されたシーンは印象的。

ここでそんなことできないだろう?的な安っぽさを感じると同時に、 もしできたとしたらこんな感じになるのだろうか、という疑問も抱いた。 周囲からしたらその人の人格が本当に転送されているのか何か分からないし、 同じような振る舞いをするのであれば、できているできていないに関わらず、その人なんだろうなと。 ちょっと横道に逸れた感はありますが、そんなことも思いました。

そして、本当に最後にギャングの嫁さんの意識を復活させようとしているシーン。 この部分はゾクゾクッと鳥肌が経ちました。 特に、このタイミングで流れているBGMが凄いんですよね。 子どもの声のサンプリングって、無邪気さと同時に、ある種の狂気を感じさせるじゃないですか。 この薄ら寒さ、最高でした。

おわりに

IoT/AIの未来を覗き見つつ、人間そのものへの問題提起もしつつといった本作でした。 結局、人の意識を転送することができる+人工知能は人間を裏切らないという、 想像しうる限りの万々歳な未来で幕を降りました(登場人物は別として。)

若い頃の私であれば、凄く好きな作品!と諸手を挙げて祝っていたかもしれません。 けれど、なにかもう少しスパイスが欲しいなぁ、とも感じてしまいました。というわけで、70点です。

チャッピー

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