れあこん

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名誉は持って生まれるもの、誰もそれを奪えず、失ってもならぬ。 - ラスト・ナイツ レビュー

はじめに

普段私はサラリーマンをしているのですが、その勤め先の社食にて本作の試写会が開かれました。「忠臣蔵」がベースのハリウッド作品ということで不思議に思いましたが、「キャシャーンがやらねば誰がやる」で有名な『CASSHERN』で有名な紀里谷和明監督のハリウッド進出作品とのことでした。
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クールに(しかし心は熱く)語る紀里谷監督。

短い時間ではありましたが、様々な事を語られていました。 本作品、世界33カ国で上映が決まったにも関わらず、日本では配給会社がどこも契約してくれなかったこと。そのため、しょうがなく自分達で全て配給をおこなっていること。そして、これからの世の中、日本だけではなく世界で勝負することの意味……最初の挨拶の間しか居られませんでしたが、とても惹かれる語りでした。

さて脱線しましたが、本作のレビューにいきましょう。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

大臣への賄賂を断り、反逆罪を勧告されたバルトーク卿に死罪が下された。最も残忍な処刑方法によるその死罪は、愛弟子ライデンの手による斬首だった。バルトーク卿の首を自身の刀で落とすこととなったライデンと仲間の騎士たちは、無念の思いで復讐の時を待ち続けた。そして1年後、ライデン率いる気高い騎士たちは、主君バルトーク卿の不当な死に報復する戦いをはじめる。

感想/印象に残ったフレーズ

主君への忠誠こそが騎士(ナイツ)の生きざま。 そのメッセージを最初から最後まで貫き通した作品でした。

概要だけ読むとミスリードになりそうなので、補足します。
主人公であるライデンはバルトーク卿を斬首してから、魂が抜けたように腐ってしまいます。それこそ報復するために戦い始めるまでが本当に長い。この間、報復を考えるような描写も無く、ただただクズな酒飲み男をしています。酒に溺れ女に溺れ、最後には主君であるバルトーク卿より授かった剣すら売ってしまう。

この展開から「やはり俺は改心した!宿敵(大臣)に復讐する!」
となるのであれば嫌だな、と正直ゲンナリして観ていました。

ですが、実際にはそのおこない全てが演技で、1年間クズを演じ続けていたのです。斬首から1年後、見張り者が見張るのを止めたその瞬間、復讐計画が動き出します。ずっとクズを演じていたライデンが一気に騎士の顔になり、仲間を率いて攻め込むのです。このシーンは手前味噌ながら鳥肌が立ちましたね。

さて、本作で個人的に印象に残っている2つのフレーズです。
 1.血のつながりより大切なのは心の絆だ
 2.名誉は持って生まれるもの、誰もそれを奪えず、失ってもならぬ

特に2つ目の台詞は重く心に響きました。
ライデンが上述した演技をし通した後に、復活して放った台詞。
そのシーンを経たからこそ、説得力があり、心に染みますね。

おわりに

本作は一見すると騎士の生き様を描く作品の様に見えますが、その実は古くは戦国時代から、日本の侍に脈々と伝わってきた大和魂なのではないでしょうか。特に一番最後のシーンは正にハラキリですね。

また本作、最後のシーンでライデンは死んでしまいますが、その騎士としての生き方は次世代へと受け継がれます。そういう意味でのLast(続く)Knights(騎士)というタイトルだったのかと思います。

採点ですが、70点です。
映像も見事のひと言ですが、いかんせんストーリーがとてもベタベタな内容でした。 ライデンの心が折れていないことが分かるような、伏線もなかったのはマイナスですね。ただ、ベタベタではありますが、シンプルで、その分とても力強さは感じます。 監督がこういった魂を全世界に届けたい、という気持ちはとても伝わる作品でした。

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2015/11/02 鑑賞@社食