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れあこん - Rare Cheesecake Complex

書評、映画評、音楽評など、各種レビュー記事を掲載しています。

どうか乾杯を 夢追い人に / ラ・ラ・ランド レビュー

はじめに

エマ・ストーンが主演している本作。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』における小悪魔な演技がとても好きで、以来彼女のファンとなってしまいまして。今回は主演女優ということで、彼女の演技を楽しむために映画館に足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

オーディションに落ちて意気消沈していた女優志望のミアは、ピアノの音色に誘われて入ったジャズバーで、ピアニストのセバスチャンと最悪な出会いをする。そして後日、ミアは、あるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンと再会。初めての会話でぶつかりあう2人だったが、互いの才能と夢に惹かれ合ううちに恋に落ちていく。

感想

まず、出だしのミュージカルで度肝を抜かました。 高速の渋滞で人々が乗る車群を映しているのですが、気付くと女性がクルマから飛び出して踊り出して。 何が始まるのかと思いきや、渋滞に捕まっている人々から人が次々と降りてきて一大ミュージカルとなってしまうのです。

突拍子も無い始まり方ですが、この勢い・音楽・流れが正に本作を良く表しています。

セバスチャンとミーアが運命的な何度かの邂逅を経て、惹かれ、恋仲となっていく、 この辺りの展開をほぼ全て音楽に乗せてたミュージカル調で描いていくのがとても興味深いです。

さて、ストーリーとしては2人の熱々な雰囲気に序盤はずっとヤられっ放しです。 ミーアがセバスチャンの夢であるジャズバーの名前を『CEBE'S』にしよう!って提案したりして。 特に2人が科学館でデートをするシーンでは、2人が宇宙に飛び出してダンスを踊る。 B級映画ここに極まれり、と言った具合で、この辺りは正直盛り上がりに欠けます。

ですが、ここを乗り越えられるかどうかが分かれ目……どうにか堪えてみていただきたいところです。 本作は単なる恋愛物語では無く、主人公の2人の男女がそれぞれの夢を追いかける夢追い物語でもあり、 それがこの後のストーリーをとても味わい深いものにしているのです。

セバスチャンは旧友のキースからの誘いで自分の情熱を殺してお金のために働くようになります。 そのことで仲違いし、別れて……けれど、セバスチャンがミーアを夢である女優へと繋ぐ役目を果たして、 結果的に2人はお互いに納得のいく形で未来へと進むことになります。

そして月日は流れ5年後。
2人の夢追い人が別れて5年後。え、いきなり5年後??と驚くのも束の間、更なる驚きが。 女優になるという夢を果たしたミーアが、家に帰ると、そこには子供と家族と、旦那——セバスチャン以外の男が居るのです。 5年の月日はミーアを新しい人生へと押し流してしまいました。

そんな感傷に浸る間もなく、旦那とミーアがドライブで外食へ行くのですが、 たまたま入ったの名前バーが『CEBE'S』。そう、ミーアがその昔に提案した名前のお店だったのです。 ステージ上にいるセバスチャン、彼が演奏する直前に、ミーアに気づきます。何て残酷な、ボタンの掛け違えなのでしょう。

ですが、彼が演奏を始めた瞬間から、全ての記憶がやり直されます。 2人の最悪な出会いは、口付けからの最高の始まりに。 仲違いした理由であるキースの誘いは華麗にスルーし、大失敗したミーアの1人芝居は大成功して。 5年後も勿論旦那としてセバスチャンがミーアと仲むつまじく過ごして…… 掛け違えたボタンの、すべての答え合わせを見ているような。たら、ればをすべて実現したような。 そんな、たどり着けなかったハッピーエンドを描いていて、何とも目頭が熱くなります。

完璧に幸せな人生を過ごしている人は少なく、どんな人でも「あの時こうしていたら」「こうしていれば」 と言った感情を何処かで持ち合わせているもの。そんな、多くの大人の心の奥にある感情を大きく揺さぶるシーンでした。

さて、全てを見終えたミーアは、すぐさま店を出ます。最後に振り返り、セバスチャンと目をあわせて。 ほんのほんの少しの微笑みを讃え、直後、唐突に『The END』の文字とともに本作は終わります。 タイミングも申し分なく、エンドロールで流れる曲で余韻に浸らせるという、完璧な終わり方でした。

おわりに

今作、色々と難癖を付けたい部分も多々あります。 序盤、ミーアが彼氏がいるのに平気でセバスチャンとデートしたり、セバスチャンはセバスチャンでバーの看板を豪快に壊すなど、自己中なシーンでいらっとしたりもします。そして、前述の通り、B級映画全開な演出もあります。

ただ、全編を通じて、曲にあわせて踊り出す・ミュージカル的な演出はとても挑戦的で悪くないと思いました。 そして、何より。最後の追い込み・畳み掛けは圧巻の一言。筆者はボロ泣きしてしまいました。本作がアカデミー賞の最有力と言われている理由を知らしめられた気がしました。と言うわけで、採点は91点です。

夢を追うという、人間誰しもが持つ思い。そして自分の好きな人と一緒に幸せに過ごしたい、という思い。恐らく永遠のテーマであるこの要素の旨味を上手に料理仕切った名作だと思います。

2017/02/24 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

自分のおっぱい本当に好きやねぇ - 君の名は レビュー

はじめに

新海誠監督の最新作!そしてまさかのシン・ゴジラ越え! 同監督の作品は今までどちらかというとコアなファンに支えられてきた印象があり、 その絵のタッチや内容の所謂ヲタ臭さから、大衆に受けるような作品とは言い難いと感じていました。 それがここに来てまさかの大ヒット。大変興味を惹かれ、劇場に足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。

感想/印象に残ったフレーズ

男女の入れ替わりという使い古されたシチュエーションを題材とした本作。 最初はコミカルに、入れ替わりをおっかなビックリ楽しむ様が描かれております。甘酸っぱい青春ものだと思いきや、入れ替わりが起こらなくなったことがきっかけで物語は急展開。彗星の衝突というトンでも展開に加えて、実は時間差での入れ替わりだったと言うことも発覚。途中でヒロインの三葉が死んでしまうという窮地も乗り越え、無事にハッピーエンドを迎え……こう書くと、内容てんこ盛りですね。

序盤の瀧がひたすら自分のおっぱいを触るのも笑ってしまいましたが、中盤以降発覚した時間差での入れ替わりというのをとても新鮮に感じました。正直予想していなかったので。加えて、立花瀧が彗星衝突時の死亡者リストの中から三葉の名前を見つけて閉まったシーンでは涙をせずには居られませんでした。

さて本作。とても大事な箏を思い出させてくれる作品だと感じました。 夢の中で起こったことが現実で起きたりすると、それが実は深い意味があるんじゃないか?とか幼い頃には考えたりしたと思います。凄く楽しかった夢の内容も段々忘れてしまい、次第に思い出せなくなってしまうという経験もしたことがあります。 でも、大人になった今ではそういった記憶もほぼ無くなってしまっていますし、見た夢の内容も別段気にしないようになってしまいました。それが現実を生きていると言うことなのかもしれませんが、それは本当に『いま』を生きていると言えるのでしょうか? 宮水一葉(おばあちゃん)が話した名言『よりあつまって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それが組紐。それが時間。それがムスビ』という台詞を聞くにつけ、自分の人生が本当にまた繋がるのか?と感じます。何とも言えない焦燥感と言いますか、胸の奥底を甘く掻き毟られるような気持ちにさせられました。

最後にBGMに関して。 映画自体、RADWIMPSのボーカル曲から始まります。それはそれで作品に引き込む意味合いもあってとても良かったです。RADWIMPSというグループを詳しく知らない私ですが、ちょっと買ってみようかなと考えるくらい、合っていました。ただ、ですが。その後も要所要所で彼らの曲が入ります。全体で3〜4回くらい、サビを歌いきるシーンが入ったかな?
会話を入れずに動画だけで時間を経たせる・雰囲気を伝えるという手法は良いと思うのですが、正直毎回彼らの歌声というのはやり過ぎ感がありました。食傷気味になってしまう人も多いと思います。

おわりに

本作の採点ですが、85点です。

余談ですが、本作の大ヒットに関して思うところがあります。『はじめに』の項でも書いたこととも関係するのですが、新海誠監督のこういったアニメ作品が世間一般に受け入れられるようになったことが、そのまま時代の変化を表しているのかなと。 今の中学生・高校生の間ではニコ動が人気で、初音ミクの楽曲が給食の時間に流れているそうです。これは10年20年前には考えられなかったことで、そういった物を好きと言った瞬間にヲタクのレッテルが貼られてしまうものでした。それが今では流行の文化の1つとなっている。そういった若者文化の流れ・世間の流れを受けてのこの大ヒットなのでしょうか。

君の名は。(通常盤)

君の名は。(通常盤)

2016/09/20 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

『無人在来線爆弾、全車投入!』 - シン・ゴジラ レビュー

はじめに

川崎良くやった』という評判を良く聞く本作。 映画に地方自治体が協力することで知名度が上がってうんたらかんたら、というまことしやかな噂に惹かれ……また、勿論、エヴァの監督である庵野氏の新作ということもあり、鑑賞してきました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官・矢口蘭堂を演じる長谷川博己内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が出演。加えて、狂言師野村萬斎ゴジラモーションキャプチャーアクターとして参加している。

感想/印象に残ったフレーズ

64年の時を経てリメイク?された本作。 恐らく2016年現在の日本を舞台にしているのでしょう、現代版ゴジラとしてとても興味深い作品に仕上がっていました。ネットの情報の素早さ・それに対する組織社会の情報収集/意志決定の遅さなど、現代日本において課題と思われている事象を取り入れながら、主人公である矢口が現場主義で暴れ回る作品でした。が。とは言うものの、それが良い方に傾いてるかと言えば、必ずしもそうとは言い切れず。旧態依然の体制を壊して矢口の活躍を描きたいのかと思えば、そんなこともないようでした。『旧態』に当たる人々の描き具合が甘く、なんだかんだ有能だったり信念がある人が多いため、全く以てカタルシスに欠けます。矢口は矢口でそもそも官房副長官なので、そういった激しい展開を期待するのは筋違いなのでしょうか。

ヒロイン役であるパタースンが石原さとみである点も今一ピンと来ませんでした。アメリカを初めとする国連が、ゴジラへの核攻撃を決めていく流れになりますが、そのやりとりの多くを、見た目が日本人である石原さとみとおこなっています。この部分も正直臨場感に欠けます。誰でも良いとは言いませんが、分かりやすく欧米の女優さんをキャスティングした方が、東京への核攻撃の意味をより重く伝えられたのではないかと。
※念のため補足しておきますが、石原さとみの演技自体は素晴らしかったと思います。それだけにこのキャスティングは勿体無いなと。。。

そして、最終的には氷漬けになったゴジラ。ラストのシーンで「ゴジラが発した放射性物質半減期は20日間、数年経てばほぼ無害化される」と会話されています。2016年の現代の日本では、この結末がとても空虚でむなしい物に感じられてなりません。

ストーリー的には何とも言えない本作ですが、ビジュアル面は素晴らしいのひと言でした。特に、ゴジラが初めてレーザーを吐いて都内を焼き尽くすシーンは鳥肌が立つほど。この演出は素敵ですね。途方も無い絶望感を味わうことができました。

また、ストーリーからはずれますが、、、本作、ゴジラが被害を与えた地域に縁があるか否か?で楽しめ具合がまるで違うんだろうな、と感じます。蒲田出身、川崎在住である筆者からすると、地元総出演と言った作品でした。序盤、ゴジラが蒲田を侵攻していく際には、「ああ、心の故郷である蒲田駅が……!」だとか「ピタットハウスが破壊された!」だとか、ゴジラよりも地元の街が破壊されていく様ばかりが目に付きました。 また、多摩川を最終防衛ラインとする多摩作戦では、京急の鉄道が宙を舞って六郷土手に落下する様がとても印象的で。普段、自分がランニングしているコースが無残にも瓦礫で埋まっていく様は圧巻でした。

最も印象的だったシーンは、本記事のタイトルにもしている『無人在来線爆弾』ゴジラに突撃していくシーンですね。そう、山手線、京浜東北線東海道線が目標=ゴジラに勢いよく突撃していくシーンです。いやはや、思わず声が出てしまうほど笑ってしまいました。togetterでも皆さまつぶやかれていますが、「お前ばっかじゃねぇの!最高だぜ!」と。心からそう思いました。

おわりに

賛否ありそうな本作ですが、採点は81点です。 ストーリーやキャスティングについては疑問符が付きますが、映像面が素晴らしく、『無人在来線爆弾』という渾身のギャグも飛び出し、筆者的には中々楽しむことが出来ました。何だかんだラストのシーンではボロ泣きでしたし(^_^;)

余談ですが、長谷川博己演じる矢口が、見た目、小泉進次郎に似ている様に感じました。自分の血筋をも利用してのし上がる、政治家向きのタイプという設定と相まって。

シン・ゴジラ音楽集

シン・ゴジラ音楽集

2016/09/12 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

彼女が男をヒーローにする - デッドプール レビュー

はじめに

巷で話題沸騰のデッドプール! マーブル作品ではあるものの、アイアンマンなどの正統ヒーローではなく、 むしろ奇をてらった系のヒーローである彼。ここまで人気が出るとは意外でした。 余りマークしていなかったのですが、ようやく重い腰を上げ見に行って参りました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

好き勝手に悪い奴らをこらしめ、金を稼ぐヒーロー気取りな生活を送っていた元傭兵のウェイド・ウイルソンは、恋人ヴァネッサとも結婚を決意し、幸せの絶頂にいた矢先、ガンで余命宣告を受ける。謎の組織からガンを治せると誘われたウェイドは、そこで壮絶な人体実験を受け、驚異的な驚異的な治癒能力と不死の肉体を得るが、醜い身体に変えられてしまう。ウェイドは、赤いコスチュームを身にまとった「デッドプール」となり、人体実験を施したエイジャックスの行方を追う。

感想/印象に残ったフレーズ

デッドプールがとてもふざけたキャラクターなので、 彼のノリが受け入れられるか否か?で作品に対する評価は多少変わりそうです。 私も下品なのは耐えられますが、人をサクサク殺していくのは中々馴染めなかったです。

ですが、それも話の途中から納得感を持って観る事ができました。 物語の中盤から明かされる、デッドプール誕生の秘密。 ウィルソンが末期癌から復活するために頼った相手が実は人体実験をしている悪人達で、 そこで耐えた難い痛み・体験をしたこと。それを踏まえて考えれば、彼の行いも当然だなと。

ストーリー的には王道のボーイミーツガールで。 ハッピーエンドまでの流れは正直ありきたりで、 見ていても「当然上手くいくんだよね」という感が拭えず、ドキドキはしなかったですね。

本作はアクション映画ではあるものの、 物語の結末をハラハラしながら見るというよりは、コメディを楽しむのが正しい見方なんじゃないかな、と感じます。 序盤から中盤からずっとファックファック連呼していますし、終盤に訪れるヒーローとヒロインの再会のシーンでは、 デッドプールが親指と人差し指で作った輪っかに、指を出し入れ見せる。最高にクズです。 TEDに近いイメージですかね。こういった作品が好きな方には堪らないんじゃないでしょうか。

以下、小ネタではあるのですが。 終幕時、山羊(羊?)の上にデッドプールがまたがってうろうろするイラストが出るんですね。 その際に、山羊に生えた角をデッドプールが徐に手でしごいて、 最終的に角の先からレインボーな何やらが溢れ出します。 この演出がデッドプールって作品を端的に表しているなぁと感じました。この演出は不思議と凄く好き。 是非、最後まで席に座って見ていただきたい。

おわりに

というわけで、総合評価は63点です。 アクションの演出はとても素晴らしかったですね。 相変わらずの没入感、爽快感。心躍る戦闘シーン、堪りませんでした。

ただ、デッドプールの語りが正直微妙でした。 場面を説明しながら観客に語りかける手法、ときどき見かけるのですが、今作にはあまりあわないなと。。。 映画の世界に没入してこそ楽しめる世界観だったと思うので、集中できず若干白ける感がありました。 アクション・コメディといった話の本筋の部分が面白いだけに、なんだか惜しい作品でした。

また今回、MX4Dでの鑑賞(2回目)だったのですが、 良い部分と悪い部分を感じました。 (まだレビューを書いていないのですが、)シビル・ウォーを見たときには 初めてと言うこともありとても新鮮に凄いと感じたのです。 ですが、今回再び似たような演出が多くあったことで、 映画に対して無理矢理会わせている感を多く感じてしまいました。 登場人物が殴られているところで背中がボコボコなったり、盛り上がる所で霧がプシャーッと吹き出したり。 手法としてそれしかないのかもしれませんが、毎回これだとMX4Dで見る価値について考えざるを得ないなと。

2016/06/08 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

アプリケーションエラー発生 - 瓦礫のソフィー / 獣の仕業 感想

はじめに

立夏さん主宰の獣の仕業。
出口なし以来約半年ぶりの公演、そして、今まで彼ら彼女らが演じたのを観たことがないSFというジャンルでの挑戦ということで、是非観に行かねば!と思った次第です。
あらすじを読んだ際に厨二心がとてもくすぐられたこともあり、大変楽しみに伺いました。

概要とか

いきなりネタバレですが、結果的に"A"の心の中に終始するお話です。人の病気が科学の進歩でなくなり、人の記憶の正体が判明し、共有・再利用出来るようになった世界。その世界で、どうにもならない病を起こす現象"虹"が出現した。そんな背景でストーリーは進みます。

本作、何が良いって、キャラクターやら固有名詞やらの名称が大変興味深い。
脚本を書かれた方がエンジニアだからなのでしょうか、一々SE心をくすぐるのです。登場人物名前がnullだったりarrayだったりkeyだったりして、何ともニヤニヤしてしまいます。また、他の人とソフィーを共有するための手段の名前がシーケルなのも良いですね。Sequel、SQL。IT業界では情報の格納・取得をするための手段として用いられるLanguage。ズバリです。そして最後に、人の魂が集う『トーラ』。これは北欧神話の『Thor』らなのかな?とか勝手に思いながら観ていました。
(但しThorが何の神なのかは分からず……帰宅して調べても???なので、残念ながら関連性は無いのでしょう。。)

印象的なシーン

いろんなメッセージが込められていると思います。
・ソフィアで記録できない『トーラ』との邂逅、その共有出来ない感。
 何でもかんでもシェアリングされてしまう現代に対する警鐘。
・人類が進化に向けて見境無くモラルなく歩を進めていくことへの警鐘。
とか。なんとも表層的な箇所ですが、、、

以下個人的に印象的なシーンを2つ。

1つ目、"A"が死ぬ間際のシーンで、"Z"に話した内容。
「残りの人生を、死んでしまった人達を覚えていて、思い出し続ける」的な台詞があったかと思います。これは僕にとってはとても大事な言葉で。漫画『ワンピース』の中にも、近しいこんな台詞がありました。
「人はいつ死ぬと思う?(中略)人に忘れられたときさ!!!」
ちょっとニュアンスは違いますが。"A"のその思いの大切さ、それはとても共感できるものでした。

2つ目、最後に"Z"が"A"の様な様々な思いを受け継いで行きたい?的な話をしていたかと思います。この悲しい思いは共有されて後生に受け継がれ続けるべきものなのか?これは難しい問題だなぁと。触れられたくない、忘れ去りたいという思いがある一方、そういった思いに触れることで教訓として行きたい、といった考え方もあって。それこそ"A"が閉じていた心を無理矢理広げたことが良かったのかは誰にも分からないですし。結局、答えなんかその場その場で全て違っていて普遍的なもの何て何も無いんでしょう。

演者さんについて

keyの演者の方は初めて観たのですが、今まで私が見て来た獣の仕業にない、どっしりとした落ち着きを作品に与えていたように感じました。

そして、"A"の人。
ヴェニスの承認や出口なしで観てはいましたが、全然違う演技で驚きでした。あんな引き出しあるんだ、と、感心し切り……偉そうですね……感動し切りでした。

あと、金髪の方、時々声が声優っぽくなるのですね。可愛いなぁと感じる声と、野太い迫力のある声と。意図的に発生をぶらさせているんでしょうか、凄いですね。

音楽

素敵。毎度ながら素敵。最後、波の音で終わるあの感じ。全然別作品なのですが、DramaticCompany Inhighsの『祝福』の、船底に居るような重たい雰囲気がフューチャーされている様に感じました。

おわりに

獣の仕業×SF作品。
カレーに牛乳と言いますか、生ハムにメロンと言いますか。私の印象では共通点・交点を事前に感じられることが出来なかった組み合わせで、どんな作品を魅せてくれるのだろう!と不安と期待を胸に観劇したのですが。とても美味しく調理されていて、なんとも食べ応えのある味でした。

シェイクスピア原作の際に発生する既存の台詞をミキサーシェイクで混ぜ合わせた様な、とても潔い、ある種乱暴なまでの勢い・表現は成りを潜めていて。序盤で詳細に舞台背景を説明してくれているので、恐らく今までの観劇した中で一番すんなり頭の中に入ってきました。あまりにも丁寧だったため、設定の説明だけでお話全てが終わってしまうのでは……という良く分からない不安を感じてしまう程でした。実際、物語の時系列が進んでいくようなストーリーではなかったため、それに近しかったですが。。

個人的には『トーラ』が気になって仕方なかったです。勝手に『バケモノの子』のラストシーンで出てきた鯨のようなものをイメージしていました。脚本に演技に刺激され続けた想像力が為させられた技なんでしょう。自分が普段映画ばかり観ているからかもしれませんが、3D映像で観てみたい強く感じました。是非映像化の暁には透き通った、きらきらと儚く仄かに輝く魚の群れを観てみたいです。

これならわかるSQL 入門の入門

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登らないのは罪だよ - エベレスト 3D レビュー

はじめに

11月はこれまで映画館に3回も足を運んでいたのですが、その度に上映前の宣伝で流れていた本作。エベレストを部隊にした壮大な映像に興味を引かれ、観る事に。実際にあった事件を題材としたノンフィクションとのことで、そういった意味でも楽しみな作品でした。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

エベレスト登頂を目指して世界各地から集まったベテラン登山家たち。それぞれの想いを抱えながら登頂アタックの日を迎えるが、道具の不備やメンバーの体調不良などトラブルが重なり、下山が大幅に遅れてしまう。さらに天候も急激に悪化し、人間が生存していられない死の領域「デス・ゾーン」で離ればなれになってしまう。ブリザードと酸欠の恐怖が迫る極限状態の中、登山家たちは生き残りを賭けて闘うが……。

感想/印象に残ったフレーズ

心なしか終始重い雰囲気に包まれている本作。史実を忠実に再現していることもあり、全体的に起伏も少なく、演出も正直微妙でした。

1.ありがとうございます、ありがとうございます
2.残酷なる結末

ありがとうございます、ありがとうございます

日本人唯一の登場人物であり登山者であるヤスコ。彼女がエベレスト登頂した際に 「ありがとうございます、ありがとうございます」と拝んでいたシーンが、日本人としてとても心に残りました。 外国の映画だけれども、ちゃんと日本人を使い、日本の文化を踏まえて、然るべき演出をしている。 当たり前のことなんですけれど、何か嬉しく思いました。

残酷なる結末

ガイドであるロブの判断ミスによって訪れた最悪の結末です……本作の肝であり、描きたかったことそのものなのでしょう。1人の客が体調悪化したにも関わらず登頂したいと言い張りました。
「この機会を逃したら“世界最高峰”に登ることは2度とないだろう」と。
結果的にロブは彼を山頂まで連れて行き、けれども、その後彼らを麓まで送り届けることはできず。その上、自分自身も犠牲になってしまいました。

日本では良く言われていることですが、山は怖い、と。それにも関わらず、客のわがままを聞いてしまったロブ。客の言い分も分かります、特にあと一歩で山頂まで行ける状態なら尚更そうかも知れません……けれど、そこはプロフェッショナルを遠さなければいけない場面だったのでしょう。悲劇的な結末でした。

……とは言うものの、正直自分は彼らに感情移入をすることは出来ませんでした。山という危険な場所に来たにも関わらず、他人への迷惑を顧みずに自分の欲望を優先する客、厳しい判断を出来ずに犠牲となったロブ。悲劇ではあるのですが、なるべくしてなった必然といった印象を受けました。

以下、余談です。後から知ったのですが、ロブの奥さんを演じているのは『イミテーション・ゲーム』で好演したキーラ・ナイトレイだったのですね。 www.rarecomp.com
お気に入りの女優の1人だったはずですが、鑑賞中は全然気付きませんでした……

おわりに

本作の採点ですが、62点です。
映像が凄いという前評判で観に行ったつもりでしたが、正直映像で惹かれるようなシーンは見当たらず。鑑賞後に調べてみたら「ヒマラヤで実際に撮影した」 ということに価値がある作品だったようです。そんな前情報を知らないと凄いと思えないような作品じゃどうしようもない、ですよね。 ストーリー自体も好みでは無いバッドエンドであり、その経緯についても(前述の通り)特に同情的な気持ちになれる訳でも無く。淡々と過ぎ去った2時間1分でした。正直あまりオススメできません。

2015/11/18 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎

楽しいことを考えろ - PAN〜ネバーランド、夢のはじまり〜 レビュー

はじめに

前回に続きTOHO CINEMASのシネマイレージ・ウィークでに見て参りました。2本目は『PAN〜ネバーランド、夢のはじまり〜』。ピーターパンの物語ということで、幼い頃童話が大好きだった筆者には堪りません。期待を胸に映画館に足を運びました。

概要 ※映画.comさんより抜粋させていただきました。

ロンドンの孤児院に暮らす少年ピーターが母親を探すためにネバーランドに旅立ち、若き日のフック船長やタイガー・リリーといった仲間たちとの出会いや、ネバーランドを牛耳る海賊・黒ひげとの戦いを経験していく姿を、ファンタジックな映像美とともに描く。

感想/印象に残ったフレーズ

本作、1にも2にも映像が美しい!もちろんそれだけではないのですが、最も印象的だったのは映像ですね。観ているだけで幸せな気分に浸れる、ファンタジックな映像美。いやはや、堪りません!
1.空飛ぶ海賊船
2.妖精の国を探すBGM
3.海賊黒ひげ……?

空飛ぶ海賊船

ピーターが船に乗せられて孤児院から出発した直後。海賊船がいきなり空を飛んだかとおもったら、海辺に降りてきてドリフトを決めるのです。華麗に海の水にブレーキを掛けながら、再度空に飛び立っていく、この展開が格好良くて堪りませんでした。アクションだけでここまで魅せられるのか……!と感嘆しました。

妖精の国のBGM

劇中、フックが海賊船に乗って人間の世界に帰り、タイガーリリーとピーターで妖精の国を探すため歩き出すシーンがあります。 この場面の音楽が正にファンタジーといった具合で堪らないのです。これは是非本編を観て味わっていただきたい……!

海賊黒ひげ……?

ここまで本レビューを読まれた方で、童話のピーターパンをご存知の方は疑問に思うはずです。黒ひげ?あれ、ピーターパンが戦ったのはフック船長じゃないの?と。 本作の設定の妙が正にここにあります。フックが、いわゆる"フック船長"になる前の時代背景でのお話なのです。

それを思わせる描写が本編にもいくつか出てくるため、観客は思わずにやっとしてしまう仕掛けになっています。 例えば、カヌーで海を旅しているシーン。ワニが襲ってくることを知ったフックは、ピーターやタイガーリリー以上に、必要以上にワニを怖がるのです。まるで何かの予感がするかのような。 次に、非空挺の上でピーターとフックがどっちが船長なのかを話し合ったシーン。ピーターがフックに対し、「フック船長だ!」と宣言します。ここから悲劇の未来が始まるんですね。 そして、本編のラストで、パンが自分が居た孤児院に戻ったシーン。「彼は海賊なの?」と問いかける子供に対して「今はまだね」(うろ覚えですが)と答えます。これから戦うことを暗示しているかのように感じられます。

おわりに

というわけで、本作の採点は、87点です。 ストーリーにもニヤニヤさせられましたが、何よりも世界観を表現仕切った映像美・音楽美、これに尽きると思います。Blu-Rayが発売したら是非もう一度観てみたい。そう思わせてくれる傑作でした。

ピーター・パン & ピーター・パン 2 ネバーランドの秘密 / DVD3枚組

ピーター・パン & ピーター・パン 2 ネバーランドの秘密 / DVD3枚組

2015/1/08 鑑賞@TOHO CINEMAS 川崎